彈性的に結合せられたる二つの圓板の廻轉釣合(其1) : 特にターボ送風機ポンプ等の羽根車の強さに就て
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概要
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茲に報告するは弾性的に結合せられたる二個の圓板が廻轉する時の釣合の問題にして結合が連続的なるが故に其の釣合は歪エネルギーの問題となり一般には困難なる問題なり。依つて種々の假定を用ひて其の解を示したれば之れが如何程眞實と一致するやは實験の結果に俟たざるべからず。目下此の實験は準備中故完成の上更めて報告すべきも不敢取其の解法として報告することゝせり。而して之れが實際問題はターボ送風機渦巻ポンプ等の羽根車の強さに就て羽根及蓋板を同時に考へたる場合に相當す。従來の計算法は羽根による力を全く考へに入れずして単に羽根質量を全部主圓板に負擔せしめ蓋板は別に独立せる圓板と考へて各別に計算するか又は蓋板と主圓板との厚さを加算したる一個の圓板として計算するもの等なれど、前者は安全に過ぎたるものにして後者は有利に過ぎたる計算なり。近來高速度廻轉機械類の發達に伴ひ此の問題を明かにすることの重要なるは言を俟たざるべし。此の問題は著者の知れる範囲内にては未だ他に論ぜられしを見ず新規の解法なりと信ず。前述の如く多くの假定を含むものなれども尠くとも定性的には實際の場合に比して大なる誤差なかるべし。假定の主なるものは次の如し。(1)圓板の廻轉軸方向の主應力は無視したり。(2)圓板の厚さは半径に對して変化急ならずと看做す。(3)圓板内同一半径の各点は歪みし後も常に同一半径内にあり。(4)圓板の結合片による力は各圓板に於て同一半径の圓周上には均一に分散せりと看做す。(5)結合片による力は両圓板の半径方向に働く。以上の如き仮定を用ひて先づ両圓板の強さの一般式を求め次に羽根重量を適當に両圓板に分配して二個の互に独立せる仮想的圓板となし且つ蓋板の内側に適当の焼嵌を施すことによりて此の二つの廻転体に全く同一の伸及び應力を有せしむることを得るを証明し更に此の羽根重量の分配法の解を示したり。次に両圓板が同形の時は全く此同じ條件が全羽根車の安定釣合の條件にして相似形の時は略ぼその條件なることを証明せり。次に通常の羽根車に於て蓋板の強さ及び羽根を通して働く力を考へに入れたる一般の圓式的解法を示し更に蓋板の内側に焼嵌を施して両圓板の外邊の伸を一致せしむれば蓋板に生ずる過大の應力を大いに軽減し之れを略主圓板と同一になし得ることを明にしたり。次に一般の不相似圓板に於ては如何なる方法を講ずると雖も安定なる釣合の位置に於ては両圓板の伸は一致せざるを証明したり。即ち茲に注意すべきは不相似圓板に對し羽根を適當の曲線に沿ひて切断して各別に両圓板附属せしめたる二個の仮想圓板に於ては適当なる焼嵌を一方の圓板に施すことによりて其の伸及び應力を一致せしめ得るに反して之れを一旦弾性的に結合すれば伸は之れとは同一ならず両圓板相異るものと成ることなり。然れども両圓板の形状の差が大ならざる場合には以上の如くして計算したる焼嵌を施さば結合圓板に於ても略ぼ同様の伸を生ぜしめ得ることを知りたり。故に理想としては蓋板は主圓板と同形なるか又は相似形なるを良しとす。通常の羽根車に於ては蓋板の伸及び圓周應力は常に主圓板よりも大にして蓋板の内側に附したる漏止め環は通常の寸法にては蓋板を強むるの効なし。又一般に通常の羽根車に於ては蓋板の内孔は成るべく小なるを良しとす。圓周方向の主應力は此の点にて最大となる。然るに半径方向の應力は蓋板内一般に非常に小なり。蓋板内側に適當の焼嵌を施すことは此の不平均の應力を均一にせしむるに効果あるものなり。以上の如き注意を以て羽根車を設計すれば高速度廻転の羽根車に於て其の安全性を確實にすること明かなり。従来行はれたるが如く主圓板は羽根を全部負担するものとして其の強さを計算し別に蓋板のみの強さを独立に求むる方法例へばOstertag氏、Kearton氏等の著書にあるものは安全に過ぎたる方法と云ふべし。又蓋板の厚を主圓板に加算して一つの圓板として計算するものあれど斯の如きは不相似圓板にして焼嵌なき蓋板を主圓板と同一の伸を有すと仮定するものにして可なりの誤差あるべく且つ有利に過ぎて危険なる計算と云ふべし。而して新らしき此の方法は之等従来の計算法に比して一歩を進めたるものと云ふべく之れに依れば信頼程度高き安全なる羽根車を設計し得べしと信ず。因に相似形又は相似形に非ざる圓板よりなる送風機の羽根車に適當の焼嵌法を施して可及的に各圓板の伸及び應力を一致せしむる方法は三菱造船株式會社に於て特許出願中に係るものなり。
- 1930-01-18
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