濾紙血IgE値による乳幼児期のアレルギー性疾患の発症予知についての研究
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概要
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先天性代謝異常症のマススクリーニングに用いる採血濾紙で新生児の踵から採取した濾紙血のIgE値を測定し, その後の1歳6カ月と5歳の時点にそれまでのアレルギー性疾患の発症の有無を追跡調査し, 濾紙血IgE値による乳幼児のアレルギー性疾患の発症の予知について検討した。濾紙血IgE値はtime-resolved fluoroimmunometric assayで測定し, 測定限界である0.015U/ml (血清の値に換算すると約1U/ml) 以上を高値例とした。その結果, 1. 濾紙血IgE高値は, 新生児389例中28例 (7.2%) だった。2. その後のアレルギー性疾患の発症について。1歳6カ月の時点で診察およびアンケートに回答のあったのは203例, 5歳の時点でアンケートに回答のあったのは87例だった。また1歳6カ月の時点で診察し採血し得たのは134例だった。1) 1歳6カ月時の調査。濾紙血IgE高値の20例では全例にアレルギー性疾患の家族歴があり, うち18例 (90%) がアレルギー性疾患を発症した。また濾紙血IgE低値でアレルギー性疾患の家族歴のある106例では53例 (50%) にアレルギー性疾患の発症がみられた。さらに濾紙血IgE低値でアレルギー性疾患の家族歴のない77例では19例 (25%) にアレルギー性疾患の発症を認めた。これらの3群間にはそれぞれ有意差を認めた (いずれもp<0.01)。1歳6カ月時に採血ができた134例では, 新生児期の濾紙血IgE高値の15例中13例 (87%) は1歳6カ月時の血清IgE値が高値で, 濾紙血IgE低値例での119例中37例 (3l%) に比べ高率だった (p<0.01)。2) 5歳時の調査。5歳までのアレルギー性疾患の発症は, 濾紙血IgE高値では19例中18例 (95%) で, 低値例での68例中39例 (57%) に比べ高率だった (p<0.01)。濾紙血IgE低値でかつ1歳6カ月以降にアレルギー性疾患を発症した症例が調査し得た35例中13例 (39%) にみられた。3.アレルギー性疾患の発症予知検査としての濾紙血IgE値のspecificityおよびsensitivityは, 1歳6カ月時で98%, 20%, 5歳時で97%, 32%と, specificity は高いがsensitivityは低かった。以上, 濾紙血IgE高値例ではアレルギー疾患の発症率が極めて高く, 新生児期の濾紙血IgE値がアレルギー性疾患の発症を予知する指標になりうることが明らかとなった。しかしながら多数を占める濾紙血IgE低値例でも, その後のアレルギー性疾患の発症が少なくないことから, 再度スクリーニングを行うなど再検討が必要と考えられた。
- 日本アレルギー学会の論文
- 1993-05-30
著者
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