金屬の燒着について
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概要
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既に古くW.Springは互に壓し附けられた金屬2片が正規の融點以下の温度において互に固着し得ることについて簡單なる定性的の實驗を行つている.またTammannは金屬粉末の加熱凝着の實驗を行つた.かゝる金屬の燒着については筆者もまた,たびたびこれを經驗したのであるが本研究においてはこの燒着現象を詳細にかつ組織的に實驗し,その結果を檢討した.しかして實驗結果は金屬の加工を受けた表層部が融點以下の温度で融解するものとして了解し得ることを示した.なお種々の金屬についてその燒着最低温度を決定し得たが,これを再結晶最低温度と比較し,また吟味を行つた.これによつて加工表層の低温融解の事實をさらに明確化し得た.上記に加工表層なる言葉を用いたが正し<云えば研琢磨加工層のことであろ.研磨加工の過程においては金屬表面の結晶粒子はまず細分せられ種々の自由方向を有つ,より微細な結晶となるであろう.なお各微細結晶は永久歪を受け亂れた格子のものとなることもあり,また彈性歪を受けておるものも存在するであろう.さらに細分結晶の境界および加工表面に非晶層の生ずることも考えられる.つぎに琢磨加工を受ける場合には結晶細分もさらに増進し,また非晶層の生成も増大するものと思われる.以上の如く加工の影響を受けた部分層を總稱して研啄磨加工層あるいは單に加工層と呼んだのである.
- 一般社団法人日本機械学会の論文
- 1947-10-30