ヒト血中抗卵透明帯抗体の検出とその分析に関する研究
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概要
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本研究ではブタ卵の螢光抗体法によって検出されるヒト血中抗卵透明帯抗体と不妊との相関性ならびにブタ透明帯抗原に対して作製した単一クローン抗体(Mab)を用いてヒト血中抗透明帯抗体が認識する抗原の多様性につき検討した.ヒト血中抗透明帯抗体の検出には,ヒト卵と抗原性を交叉するブタ卵透明帯に対する間接螢光抗体法を用いた.未吸収ヒト血清はブタ卵透明帯に対してほとんど全例が螢光染色陽性を示したが,被検血清をブタ新鮮血球で吸収後の陽性率は不妊婦人群で25.5%,妊婦群で33.3%,男性群で28.8%となり3者間に有意差を認めなかった.これを更にブタ肝・腎臓組織で吸収すると各血清の陽性率はさらに低下し,それぞれ6.4%,13.1%,4.4%となり,さらにブタ卵巣で吸収後はすべての症例で陰性となった.次いで抗精子抗体との相関性をみる為,精子不動化抗体保有婦人と非保有婦人につき各吸収過程に於ける抗透明帯抗体の検出率の比較を行ったが,両者間に有意差を認めず相関性は認められなかった.肝・腎吸収後に陽性を示した被検血清の中でヒト透明帯への螢光染色陽性を示したものは妊婦1名,男性1名のみでそのγ一グロブリン分画によるヒト卵への精子付着阻害試験では両者共全く障害作用を示さなかった.特異性の異なる4種類のブタ卵透明帯に対するMabを用いて,各Mabと可溶化ブタ透明帯抗原との酵素抗体(ELISA)反応系を確立し,被検ヒト血清による反応阻止実験によりヒト血中抗透明帯抗体の多様性を検討した.2種類のMab反応系において,有意に反応阻止を示す被検血清が認められたが,螢光抗体試験の場合と同様に不妊婦人に特異的に検出されるものでなく,妊婦,男性血清の中にも反応阻止を示すものが存在した.以上の如くブタ卵透明帯を用いて検出されるヒト血清中の抗透明帯抗体は不妊婦人に特異的なものではなく,また同様の抗体が男性にも検出されることからヒト卵透明帯に対する自己抗体とも考えがたく,たまたまブタ卵透明帯と抗原性を交叉するなんらかの外来抗原に対して産生された抗体で,不妊症の発生とは関係ないものと考えられる.
- 1985-06-01
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