妊娠中毒症の実験的研究 : 特に食塩と妊娠高血圧との関連
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概要
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妊娠高血圧の実験モデルとして,SHRに食塩を負荷した結果,次の如き成績を得た.1)SHRの収縮期血圧は,妊娠末期に下降するが,食塩負荷群では下降せず高血圧を維持した.2)食塩負荷群では尿量が増加し,同時に尿中Na,Clの排泄量も増加するが,常にClの方がNaの量を上回った.3)対照群の尿中カリクレインは,妊娠末期に増加し,分娩直前には減少する傾向がみられた.1%食塩負荷群では,妊娠末期に対照群より更に増加する傾向がみられ,特に1.5%食塩負荷群では,妊娠初期より,高値をとり続けた.4)PGF_2αMUMは1%食塩負荷群で対照群よりやや高値で推移し,1,5%食塩負荷群では著しい高値であった.5)血漿レニン活性は,対照群の妊娠第20日目で,非妊娠時に等しく,1.5%食塩負荷群では,有意に低下した(p<0.05).6)血漿アルドステロン濃度は,対照群の妊娠第20日目で非妊時より高く,1.5%食塩負荷群では,逆に有意に低下した(p<0.05).7)SFDの発生率は食塩負荷群で高く,特に,1.5%食塩負荷群では胎仔致死率が23.8%と高率であった.8)食塩負荷群の母獣腎,胎盤に,血管を中心とする組織学的変化が認められた.以上のことから,妊娠SHRに食塩を負荷すると高血圧の程度が一段と高まり,その病態生理はヒトの妊娠高血圧と比べて一致点が多く,食塩が妊娠中毒症発症の重要な因子のひとつであることが示唆された.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1984-08-01
著者
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