臍動脈血流動態と局所性Prostanoids産生・放出量との関連について
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
胎児成育には, 胎児・胎盤系の循環血液量が適切に維持されていることが必須条件であり, それには局所的なprostanoidsが関与している可能性がある. そこで, パルス・ドプラー法による臍動脈の血流波形から同系の血流動態を解析する一方, 分娩時の臍帯血管および胎盤組織におけるprostacyclin (PGI_2), thromboxane A_2 (TxA_2)の産生・放出量を測定し, 両者の関連性を検討した. その結果, 臍動脈の血流抵抗の指標としたresistance index(RI), すなわち, peak-systolic flow-end-diastolic flow/peak-systolic flow比の波形から算定した値は, 対象とした15例で0.62〜0.74の間にあり, 平均0.67±0.03であつた. また, RIと生下時体重との間にはr=-0.70となる負, 平均動脈圧とはr=0.56となる正の相関(p<0.01, p<0.05)が認められた. 一方, PGI_2産生量(pg/mg湿重量/15分, 6-keto-PGF_<1α>として)は臍動脈>臍静脈>胎盤の順で高く, かつappropriate-for-dates baby (AFD)群の臍動脈で最も高値となつたが, 生下時体重とは推計学的に関連性はなかつた. TxA_2産生量(TxB_2として)は臍動・静脈間で相違がなかつたが, light-for-dates baby (LFD)群の臍動脈で最も高値となり, 生下時体重とはr=-0.56となる負の相関(p<0.05)がみられた. また, RIと臍動脈のPGI_2/TxA_2比との間にはr=-0.73となる負の相関(p<0.01)があり, LFD例のうちのRI>0.66の群では臍動脈PGI_2と負, TxA_2と正の相関性が認められた. しかし臍静脈ではこのような特定の関連性がなかつた. また胎盤においては臍動脈とは対蹠的な変化を示した. したがつて, RIを指標とした胎児(臍帯)・胎盤循環には, 臍動脈局所におけるPGI_2, TxA_2の絶対量, あるいはPGI_2/TxA_2の相対量が影響し, 胎児の発育に関与しているものと思われる.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1989-10-01
著者
関連論文
- 24. 病態別妊娠中毒症におけるprostaglandin E_2/renin-angiotensin系とprostaglandin I_2/thromboxane A_2/vasopressin系の動態とその意義 : 第4群 妊娠・分娩・産褥 IV (20〜25)
- 48 胎児・胎盤系におけるプロスタノイド生成・分泌動態と妊娠中毒症病態との関連
- 352 ヒト子宮内膜におけるProtein Kinase C活動の動態とその意義
- 臍動脈血流動態と局所性Prostanoids産生・放出量との関連について
- 当科における卵巣悪性腫瘍術後の化学療法 : 継続入院加療と断続入院加療の比較
- 176 臍動脈血流抵抗の解析による胎児成育度の判定とその背景
- 117 卵巣腫瘍に対するゴナドトロピンの影響
- 339. 臍帯血流抵抗への局所性prostanoids産性・放出量の関与について
- 12. ヒト臍帯血管におけるprostacyclin/thromboxane A_2生成・分泌と妊娠中毒症 : 細胞内外calcium dynamicsとの関連について : 第3群 妊娠・分娩・産褥 III
- 353.妊娠中毒症の病態別arginine vasopressinprostaglandinsの母児動態とその意義 : 第59群 妊娠・分娩・産褥 IX (349〜353)
- 146.妊娠時の母児間arginine vasopressin-prostaglandins動態とその意義 : 第29群 内分泌の臨床 II(142〜146)
- 96. Radioreceptor assayによる活性型Oxytocinの定量と分娩時血中動態 : 第21群 内分泌・末梢III