妊娠中毒症における凝固・線溶・キニン産生系の動態に関する研究
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
妊娠中毒症における凝固・線溶系およびキニン産生系の動態を臨床症状の重症度との関連から検討し, 以下の結果を得た. 1) 凝固系亢進の指標であるAntithrombin III (AT-III)活性および抗原, 第XIII因子活性および抗原は, いずれも妊娠中毒症では正常妊婦より有意な低下を示し, かつ, 重症群ほど著明な低下を認めた. 特に, AT-III活性はGestosis index (G.I.)との間に有意な相関(r=-0.447, p<0.005)を示し, 凝固系亢進の鋭敏な指標であると同時に, 妊娠中毒症の重症度の指標としての有用性が示された. 2) 妊娠中毒症では, 正常妊婦に対して血漿prekallikreinは有意な低下を, また, bradykininは高値を示し, 凝固系亢進と同時にキニン産生系の亢進が示された. 3) plasmin-α_2-plasmin inhibitor complexは正常妊婦に対して有意(p<0.001)な高値を示し, かつ, 重症群ほど有意(p<0.05)に高値を示し, 妊娠中毒症では重症群ほど線溶が亢進していることが明らかとなつた. しかし, 凝固系亢進の指標であるAT-IIIとの相関でみると, 軽症群では有意な負の相関(r=-0.59, p<0.05)が得られるが, 重症群になるはど相関が得られなくなつた. つまり, 妊娠中毒症の重症化につれて, 線溶系に比し, 凝固系優位の状態となつてくることが示された.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1988-01-01
著者
関連論文
- 272 超音波法による切迫早産の治療評価と予後判定
- 532 妊娠中毒症でのDIC分子マーカーとその臨床的意義について
- 114. Placental coagulation inhibitor (PCI) の臍帯血管での存在と胎盤での局在について
- 153. 胎盤における抗血栓機構の検討 : Placental Coagulation Inhibitor (PCI) の作用機序ならびに中毒症胎盤でのPCI, Thrombomodulinについて
- 150. Plasmin-α_2-plasmin inhibitor complexからみた正常妊娠および妊娠中毒症における線溶動態の検討
- 80 胎盤性凝固抑制物質の研究 (2)
- 115 過去11年間のRDS発症を中心とする新生児統計の変遷とその背景に関する検討
- 64 複合超音波診断法による胎児循環機能評価
- 妊娠中毒症における凝固・線溶・キニン産生系の動態に関する研究