子宮頚管熟化に関する基礎的研究 : ラット子宮頚管の弾性率を中心に
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概要
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子宮頚管熟化における物性的な面からの研究として, Wistar系ラット子宮頚管のstretch modulusおよび頚管の収縮について検討した. ラット子宮頚管の摘出標本(N=220)を恒温濯流装置内において一定の速度で牽引し, 伸びと応力とを記録した. これよりstress-strain relationshipを求め, 以下のような結果が得られた. 1. ラット子宮頚管の弾性率(E)は, 非妊時466.91±129.95×10^3mgw/mm^2>産褥期29.76±5.78×10^3mgw/mm^2>妊娠末期9.80±1.26×10^3mgw/mm^2 (mean±S.E.)と妊娠末期での低下を認めた. 2. 降伏点(yield point)や破壊点(break point)については分娩時に最も低値を示した. 3. 頚管の反復伸展実験では応力の減衰を認め, しかも非伸展時の発生張力が一定であるという結果を得た. これより物理的因子の頚管熟化効果が示唆されるが, 今後さらに検討が必要である. 4. ラット子宮頚管の固定してあるbath内にPGF_<2α>, PGE_1, DHA-S等を投与し, 牽引実験を行つた. これらの薬物のなかでは, DHA-Sやpremarin等の投与によりHookeの法則に従うまでの伸び率(Lε)の延長を認めた. また, progesterone等では頚管の収縮抑制効果が認められた. 5. DHA-Sの投与で特徴的なのは, estradiolが増加することだが, estradiolの投与では頚管熟化には効果なく, DHA-Sの直接効果, その中間代謝産物の効果あるいはestradiolによつて誘起される物質の効果などが予想された. 6. 組織学的には, 妊娠末期頚管の水腫化によりcollagenが疎になつていたが, 今回用いた薬剤による著変は, 認めがたかつた. 結論として, 内分泌・生化学的因子に加え物性的因子の頚管熟化への関与の重要性も示唆された.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1988-01-01