侵奇・絨癌の超音波断層像とその臨床的意義に関する研究
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概要
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侵奇・絨癌として治療、管理がなされた32症例に超音波断層法を施行し、得られた画像を分析すると同時に、その臨床的有用性と限界に関し検討を加え、以下の知見を得た。1)32例中26例(81%)で子宮内に病巣部エコーが検出された。2)病巣部エコーは子宮体部前壁底部に高頻度にみられた。3)開腹術の施行された17例に関して超音波所見と摘出物所見はよく一致していた。4)侵奇・絨癌でありながら病巣部エコーが検出されなかった2例は、いずれも長径1cm以下の病巣であった。5)病巣部推定容積と尿中hCG値との関係はy=19.86LnX-38.97、p<0.05で相関が認められた。6)病巣部エコーパターンは4型に分類された。TypeIは子宮筋層より高輝度の腫瘤状エコー、TypeIIは複数の不整な小嚢胞状echofreespace(EFS)、TypeIIIは高輝度エコーに囲まれた比較的明瞭な単一のEFS、TypeIVは漿膜下嚢腫状パターンを呈するものとした。その頻度は、TypeI、II、III、IVが各々13例、9例、1例、3例であった。7)摘出物との照合の結果、TypeIを示したものには、血塊を中心とするもの、奇胎嚢胞の多いもの、癌組織によるものがみられたが、TypeII、III、IVは大きさ、形態の異なる出血巣よりなることが判明した。8)病巣部エコーパターンと組織学的所見との対比の結果、エコーパターンより侵奇・絨癌を判別することは容易でないと考えられた。9)TypeI、IIは病巣部推定容積20cm3以下が、TypeIII、IVは以上が多数をしめた。10)病巣部推定容積60cm3以上の4例中3例が絨癌であった。11)化学療法の効果判定に超音波所見は有用であるが、尿中hCG値の低下に比べその変化は遅れ、病巣部の縮小、消失には限界がみられた。以上より、超音波断層法は侵奇・絨癌の病巣検出に有効で、かつその治療効果判定に関しても一定の価値を有する。その呈するニコーパターソは多彩であり、肉眼所見をよく反映しているが、侵奇・絨癌の判別に関しては慎重でなければならない。
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1986-03-01
著者
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