分子量よりみた羊水蛋白の変動
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概要
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正常妊娠154例(妊娠10〜43週, 異常妊娠62例の羊水について, 総蛋白量の変化およびsodium dodecyl sulfate-polyacrylamide gel electrophoresis(SDS-PAGE)により分子量よりみた蛋白組成の変化を検討し, 以下の結果をえた.1)羊水中総蛋白量は, 正常妊娠例で妊娠16週未満の376±109mg/dlから, 妊娠24〜27週で619±168mg/dlと有意に上昇し, 妊娠28〜31週以降てば妊娠16週未満の値と有意差を認めない量へ減少した.2)異常妊娠例では, 胎児水腫5例中2例, 消化管閉塞3例および胎児死亡2例の全例において平均十2SD以上の高値を示し, 双胎7例全例が平均一2SD以下の低値を示した.3)SDS-PAGEでは羊水中蛋白は17に分画され, 血清蛋白の分画に認められる以外の新しい帯は認められなかつた.分子量(M.W.)=210×10^3以上の帯1〜4は欠如しており, 母体血清には認められず〓帯血清にのみ認められる帯15, 21〜23が認められた.4)正常妊娠例では, 帯13〜14(M.W.=56-45×10^3), 15(M.W.=38×10^3), 21〜23(M.W.=19-13×10^3)は妊娠24〜27週より妊娠経過に伴い有意に増加した.帯12(M.W・=60×10^3)は妊娠24〜27週以降漸減し, 帯7(M.W.=156×10^3), 10〜11(M.W.=88-80×10^3)では妊娠32〜35週以後有意に減少した.その他の帯では妊娠経過に伴う有意な変化はみられなかつた.すなわち, 増加する帯はすべてM.W.=56×10^3以下であり, 減少する帯はM.W.=60×10^3以上の蛋白であつた.5)母体血潮こみられず〓帯血清に認められる帯15, 21〜23が妊娠後半期に有意に増加する興味ある知見がえられた.6)異常妊娠例のうち, 羊水中総蛋白量が高値を示す例では, 特定の蛋白分画の増加はみられなかつた.総蛋白量が低値を示した双胎例では, 帯7, 18〜19が減少した.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1981-12-01
著者
-
久永 幸生
産婦人科ひさながクリニック
-
下川 浩
九州大学医学部婦人科学産科学教室
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久永 幸生
九州大学医学部婦人科学産科学教室
-
前里 宗永
九州大学医学部婦人科産科学教室
-
前里 宗永
九州大
-
前里 宗永
九州大学
-
下川 浩
九州大学 産婦人科
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