妊娠・分娩時における母体血中oxytocin動態とその意義について
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概要
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妊娠・分娩時ごとに分娩発来前後における母体血中Oxytocin(OT)動態とそれの果す役割とを検討する目的で,immunoreactive OT濃度を測定して以下の成績を収めた. 1)血漿中OTはflorisilで抽出し,2抗体法によるradioimmunoassay(RIA)で測定したが,その再現性は高く測定値変動も15%以内であり,また無抽出法による測定値との回帰方程式はy=0.37x+5.90となった.2)妊娠第24〜32週の母体末梢血漿中 OT濃度は21.1±8.0μU/ml(平均値±標準偏差),第33〜40週:26.0±12.3となり,この期間で比較的増加し,また第40週で32.9±17.0となり一過性上昇を認めたが,妊娠週数との間に一定の相関を認めなかった. 3)分娩形式による濃度を比較すると,陣痛未発来帝切群:29.6±12.1,発来後帝切群:57.3±23.1,自然分娩群:46.1±16.9であり,前者と後2者との間に有意差をみた(0.02<p<0.05).4)自然陣痛発来群における血中濃度は発来前いずれも25μU/ml以上を維持するが,一方,OT或いはprostaglandins(PGs)誘発群ではほぼ全例それ以下の濃度で,また陣痛発来前後の濃度にも有意の相違を認めることができなかった.5)自然分娩例ではI期,II期を通じて間歇期における濃度が最も高く,極期でむしろ低値となる特異な波状パターンを示すが,OT,PGs誘発例では,有効陣痛,分娩進行をみるものでもこのような波状パターンはみられなかった.従って以上の成績から,(1)自然陣痛の発来をみるには,母体の血中OT濃度が一定閾値以上を維持することがその一つの条件となるものと思われる.(2)しかしそれが必ずしも陣痛発来の引金となるのではなく,(3)分娩開始後のOT分泌は子宮筋のOT受容体の感受性に対応した2次的放出であり,そのため波状的に分泌されて子宮収縮すなわち分娩維持に与かっているものと思われる.
- 1980-12-01
著者
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