母体赤血球内2,3-DPG の妊娠経過に伴う変動とその臨床意義に関する研究
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概要
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妊娠経過に伴う母体赤血球内2,3-DPGの量的変動を観察し母体血から胎児血への酸素供給といラ胎盤におけるガス交換の面で,この物質が示す臨床意義を検討し,以下の結果を得た.1)健康非妊婦,健康成人男子における血中2,3-DPG量は,前者が14.60±0.94μMoles/g,後者は13.36土0.60μMoles/gであり,男女の性別による2,3-DPG量の差を認めた.2)正常な妊娠分娩経過をとった妊婦の母体赤血球内2,3-DPG量は,妊娠が進むにつれて漸次増量し,妊娠32週で最高値を示し(19.05土1.63μMoles/g),これは妊娠8週の48%増であり,妊娠後期では妊娠前期のおよそ25%の増量を示した.3)妊娠初期における完全流産例および切迫流産予後不良例では,母体赤血球2,3-DPGは同時期の正常妊娠のものに比較して低値を示した例が有意に多い.4)妊娠中毒症重症例では,母体赤血球内2,3-DPGが同時期の正常妊娠例の示す値よりも低値を示す例には,胎児死亡,新生児仮死に移行するものが多い.妊娠中毒症例でも2,3-DPGが正常妊娠例と同範囲内に増量するものには胎児死亡,新生児仮死に至る例は少なかった.5)IUGR例では,2,3-DPG量は正常妊娠例より低い値を示した例が多い.6)分娩中にfetal distressを経過し新生児仮死に至った例は,非仮死例に比して,2,3-DPG量も低値を示しており,P_<50>値も減少していた.7)母体赤血球内2,3-DPGと母体血P_<50>値とは相関を示し2,3-DPGの増量は酸素解離曲線の右方移行に影響をおよぼすことを認めた.以上のことから,母体赤血球内2,3-DPGは母体血の酸素親和性を低下させることにより,胎盤における胎児への酸素供給に重要な影響を与えていることが示唆された.
- 1979-04-01
著者
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