子宮頸癌原発巣に対する^<60>Co遠隔照射の影響
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概要
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子宮頚癌に対する放射線治療は^<60>Co照射装盤をはじめとする高エネルギー装置の開発によりいちじるしく進歩してきた. しかしその照射方法と照射線量にはいまなお決定的な基準がない. そこでわたくしは^<60>Co治療における至適線量の手がかりをえるために, 経時的に観察しやすい原発巣の照射効果を, 肉眼的, 病理組織学的ならびに電子鏡的に, 子宮頚部線量1日100R照射のA群(左右B点に1回300Rずつ220°振子照射をおこなう)と, 1日300R照射のB群(頚部中心に360°の回転照射をおこなう)とで比較観察した. 症例はA群23例(うち術前照射9例, 放射治療14例), B群17例(術前照射10例, 放射治療7例)で, A群には総線量4,000R(40回照射)照射し, B群には総線量6,000〜7,500R(20〜25回照射)を照射した. 放射治療例では照射終了後7日目まで観察し, 術前照射例ではさらに術後摘出標本で, 両群原発巣の変化を比較観察し, つぎの結果をえた. (1)肉眼的には照射線量の増加にともなつて, 腫瘍ないし潰瘍面の平滑化, 病巣の縮少, 出血性の減弱, 苔被形成, 瘢痕化がみられる. A群とB群の変化には大差はない. しかし線量別にみてゆくと, B群はA群よりもむしろこれらの所見がおそく発現するが, 照射線量がおおいので最終的にはより著明な変化がみとめられた. (2)病理組織学的には症例により差異はあるが, 両群ともに癌細胞の空胞変性, 核濃縮, 核崩壊, 変性巨大癌細胞の出現, 類壊死, 壊死と, 癌巣内の広範囲な壊死と縮少が著明となり, 間質結合織の増殖は, A群では2,400R (24回照射)照射から, B群では3,600R (12回照射)照射からみられる. またA群では4,000R (40回照射)照射後1/3例にあらたな癌細胞の増殖所見がみられた. B群では照射終了後にあらたな癌細胞の増殖はみられなかつた. しかし癌細胞が完全に消失した例はなかつた. (3)電子鏡的には, とくに細胞質の変化が著明で, おもに糸粒体と小胞体が膨化するが, A群では3,200R (32回照射)照射ころから糸粒体と小胞体が発達してくる. B群では照射終了後も崩壊像がつよくなる. (4)子宮頚癌中には放射線感受性のたかい例もあるが, 一般的に6,000〜7,000R程度のいわゆる癌腫量では完全な効果を必ずしも期待しがたい. そしてこのことは小線源の力のおよびがたいリンパ節においてとくに考慮されるべきである. もちろん照射線量の増大のみが唯一の方法ではなく, 放射線感受性の増強や, 照射後のリンパ節廓清などの手段も検討されるべきである.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1966-03-01
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