妊婦のエネルギー代謝に関する研究 : 特にその基準所要量についての検討
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概要
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妊婦栄養に関しては, 現在なお明確な基準が確立されていないためか, 現行の厚生省指示の栄養所要量には種々の問題点を含んでいるので, 著者は妊婦のエネルギー代謝, 特に所要熱量について検討した. 対象として非妊婦4例, 妊婦10例について, それぞれ妊娠各月数ごとにその経過を追求した. その結果は1)基礎代謝量については, 妊娠初期の悪阻や妊娠による内分泌環境の変動等により非妊婦より低値を示し, 以後後半期には増大した. その成績は非妊婦1270Cal, 妊娠後半期平均1366calで約100Calの増大である. この100calは妊娠したならば絶対に増加すべき熱量である. 2)エネルギー代謝率については妊娠末期に近づくと, 妊婦の動作は緩慢となり, 労作別による酸素消費量には大差はないが, 基礎代謝が増大するので軽労作(歩行, 買物, 食事関係等)ではやゝ低値を示した. 比較的重労作(掃除, 洗濯等)においては, 妊婦自身制禦するが, それでもなお酸素消費量が大きく, エネルギー代謝率はやゝ高値を示した. 3)総消費熱量については, 非妊婦平均2074Cal, 妊娠後半期2248calで約200cal増大となる. 妊婦においては自然的生理調節及び自己の活動制禦により案外大量の熱量は要しないことがわかる. なお, その消費熱量の10%増しが摂取熱量であるといわれているから, 総消費熱量の10%増しとすると, 前半期2200Cal, 後半期2500calとなり, 日本産科婦人科学会で調査した全国妊婦の平均摂取熱量は, それぞれ2178Cal, 2506Calであるから, 著者の実測算定した数値とほゞ同様な数値を示している. 従つて, この摂取熱量は都内団地に住む妊婦の軽労作時の最低必要熱量であり, 一般主婦の労働はより激しいものであるから, 著者の現在までの実験では, 基準所要量までも必要かどうかはわからないが, 労働の種類, 量に応じて相当量の補給の必要を認める.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1966-03-01
著者
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