早産の原因としての絨毛羊膜炎に関する基礎的及び臨床的研究
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概要
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近年, 絨毛羊膜炎が早産の一因であるという意見が注目を集めているが, この説の確認と, それに対する抗生物質療法の効果について, 以下の検討を行つた. 1. 実験的絨毛羊膜炎の作成 : 妊娠22〜23日目の家兎22匹を開腹し, 羊水腔中に種々の濃度の細菌を直接注入し, 人工的に絨毛羊膜炎モデルを作成した. それらを閉腹後抗生剤を投与しなかつた非治療群とただちに母体に抗生剤を投与した治療群に分け, 経過を観察したところ, 非治療群で高率に早産が誘発されたのに対し, 治療群では細菌が低濃度の場合には早産が阻止された. 2. 実験的絨毛羊膜炎に対する化学療法 : 低濃度の細菌で実験的絨毛羊膜炎を発症させた妊娠22日目の家兎17匹を同様に非治療群と治療群に分け, 両群とも3日後に開腹し, 子宮内組織の細菌及び病理学的検索を行つた. 非治療群では全例が早産か子宮内胎児死亡をおこし, 細菌培養や病理学的上高度の炎症所見が認められたが, 治療群ではほぼ全例が生存, 炎症所見は軽度又は皆無であつた. 3. 絨毛羊膜炎の組織所見 : 妊娠33週未満及び妊娠33週以後の早産, preterm PROMと正期産の胎盤, 臍帯の組織所見とを比較検討したところ, 妊娠33週未満の早産, preterm PROMでは, 胎盤, 臍帯ともに炎症の高度な症例が多く, 妊娠33週を境に炎症の程度に有意差が認められた. 4. 絨毛羊膜炎に対する積極的化学療法の検討 : 当院では近年 preterm PROM症例に対し, 積極的化学療法併用による待機療法を行つてきたが, その成績をそれ以前の症例と比較検討した. 前者では latent periodが延長し, その結果在胎週数が延長し, 新生児の予後も向上した. 新生児感染症の発症もなく, 積極的化学療法の有用性が確認された. 以上の研究より, 感染が早産の一因であり, それに対する積極的な化学療法の導入が早産発生の減少に寄与するものと考えられた.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1992-01-01
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