妊娠中毒症胎盤の形態学的研究
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概要
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重症妊娠中毒症(中毒症)64例を症状別[主として高血圧(H)および蛋白尿(P)]に分類し,その娩出胎盤につき組織学的および形態計測学的[Point Count(PC)法および自動画像解析法]に検索を行い,以下の結果を得た.1)組織学的には,(1)終末絨毛の萎縮,Tenny change(TC)の増加,絨毛表面などへのフィブリン沈着(FD),絨毛上皮の変性・萎縮や毛細血管基底板の肥厚,さらには絨毛間質の線維化などが特徴的であつた.(2)タイプ別検討においても各タイプ間に特徴的差異がみられ,とくに蛋白尿+高血圧(PH)タイプで最も障害が高度であり,HとPタイプの両者を併せたような所見が観察された.2)形態計測学的には,(1)絨毛間腔容積では,中毒症群は対照群に比し,またsmall for date infant(SFD)群はappropriate for date infant(AFD)群に比し,ともに有意に低値であつた.タイプ別検討では,対照群に比し,AFD群はH,P,PHタイプの順に,またSFD群はH,PHタイプの順に低値を示し,PHタイプの子宮内胎児死亡(intrauterine fetal death,IUFD)群では最も低値を示した.(2)終末絨毛容積については,対照群と中毒症群および中毒症群のAFD群とSFD群の対比ではともに有意差は認められなかつた.しかし中毒症群のAFD群は対照群に比し有意に高値を,また中毒症群のSFD群は有意に低値を示した.タイプ別検討では,絨毛間腔容積の場合とほぼ同様の成績を得た.(3)自動画像解析法にょる終末絨毛断面積,毛細血管内腔面積,毛細血管数などはいずれも中毒症群は対照群に比し,またSFD群はAFD群に比し有意に低値を示した.タイプ別検討ではPHタイプが最も高度な障害(とくにIUFD群)を示したが,HとPタイプ間に著差はみられなかつた.以上より胎盤の形態学的障害度は中毒症の重症度と深い関連性を有し,これらの変化は胎児の子宮内胎児発育遅延(intrauterine growth retardation,IUGR),さらにIUFDの発生原因の重要な一因となることが示唆された.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
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