晩期妊娠中毒症における線溶動態の研究
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概要
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晩期妊娠中毒症の病態を血液凝固線溶面から追及することが近年こころみられ,凝固尤進状態であることが判明している.しかしながら線溶面については未だ解明されるに至っていたい.本研究は正常妊婦を対照として,妊娠中毒症を軽症群,重症群,さらに子滴群に分けその線溶動態を解明するとともに,urokinaseを投与した妊娠中毒症例の血液凝固線溶系の変化もあわせて検討し以下の結果を得た.1)prothrombin time,activated partial thrombin time,α_2-brinogen,α_1-antitryplasmin,α_1-antitrypsin,plasminogen α_1-macroglobulin,C_1-inactivator,血清FDPは各群いずれも有意の差はみられなかった.2)血小板数は重症群では他に比べ有意に減少を示した.3)euglobulin clot lysis timeは重症群では他に比べ有意の延長が認められた.4)antithrombin IIIは重症群では他に比べ有意の増加を示した.5)子癇例は,各検査値が重症群と同様の値を示す傾向にあったが,やや広域に分布した.6)urokinase投与症例のα_2-antiplasmin,α_1-antitrypsinは減少する傾向にあった.7)比較的少量のurokinase投与により,蛋白尿,浮腫の改善が認められる症例も存在した.8)α_2-antiplasminが減少し,血清FDPが増加しELTが延長を示すなど,線溶能力進と低下を同時に示す症例や,urokinaseの比較的少量投与にても諸検査値が大きく変動する症例もみられた.以上のことより,妊娠中毒症の線溶動態は不安定でかつ比較的容易に変動する可能性を有していることが示唆されるものと考える.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1983-12-01