婦人科癌患者血清の単球機能に及ぼす影響について
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概要
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婦人科癌患者血清の免疫的抑制作用については,リンパ球幼若化反応に対する抑制作用の面から検索した成績を既に教室から報告した.今回は癌患者血清が,癌免疫応答において重要な役割を担っている単球・マクロファージの代謝と機能に対し,抑制的に作用するか否か知ることを目的として以下の実験を行った。すなわち健常者末梢血から分離採取した単球を被検者(子宮頚癌30例,卵巣癌12例,対照38例)血清中で前培養した後,そのβ-galactosidase活性,遊走能,貪食能,T-cell mitogen反応への補助効果の4点を解析した.1.単球のβ-galactosidase活性は,対照血清中培養後で27.3±9.8,子宮頚癌血清中培養後で25.1±10.8,卵巣癌血清中培養後で25.5±9.1であり,有意差を認めなかった.2.単球の遊走能は,対照血清中培養後で32.2±14.0であるのに対し,子宮頚癌血清中培養後で22.0±7.8,卵巣癌血清中培養後で18.7±5.2と有意に抑制された.また子宮頚癌では進行期と共に抑制作用は増強した.3.単球の貪食能は,対照血清中培養後で80.8±9.4であるのに対し,子宮頚癌血清中培養後で53.3±17.0,卵巣癌血清中培養後で58.0±18.3と有意に抑制され,また子宮頚癌では進行期と共に抑制作用は増強した.4.単球のT-cell mitogen反応への補助効果は,対照血清中培養後で3.91±0.68であるのに対し,子宮頚癌血清中培養後で2.78±1.10,卵巣癌血清中培養後で2.51±0.70と有意に抑制され,子宮頚癌ではやはり進行期と共に抑制作用は増強した.以上より,婦人科癌患者血清は,健常者単球の機能を抑制することが判明した.ただβ-galactosidase活性からみた単球の代謝に対しては抑制的でなかった.癌患者免疫能低下への血清因子の関与は重要であり,単球に対しても抑制作用を示し,癌患者における免疫的悪循環形成の一因をなすと推察された。
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1982-09-01
著者
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