虚血再灌流により誘導されたラット胎仔におけるOxidative Stressの解析
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概要
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虚血後再灌流によって起こるoxidative stress (OS)は種々の疾患や病態に影響すると考えられている. 今回, 妊娠ラットの子宮動静脈クランプによる一過性の虚血モデルを作成し, 胎仔におけるOSを検討した. 1.クランプにより胎盤血流量が減少し胎仔心拍数の低下を認めた. また組織pH値も一過性の低下を示した. クランプ再灌流10分後の胎仔血液ガス値(pH, PO_2, PCO_2)は, クランプ前値と比較して有意差を認めなかった. 2.OSの指標となる胎仔赤血球由来O・__2^^-値の変化は, クランプ時間に伴い有意な上昇を示した(p<0.01). 母獣O・__2^^-値も, クランプ時間に伴い上昇傾向を示したが有意差は認めなかった. 3.胎仔赤血球中SOD活性は, 10分クランプ群(10分群)では上昇傾向を示したが有意差を認めなかった. しかし10分群と比較し20分クランプ群(20分群)では有意な減少を示した(p<0.01). 母獣のSOD活性も有意差は認めなかったが, 同様の傾向を示した. 4.NADH, NADPHの変動は, クランプ時間に比例して有意な減少を認めた(p<0.05). 5.肝組織中の過酸化脂質は10分群と20分群に有意差を認め(p<0.01), 脳の過酸化脂質は10分群で有意な上昇を認めた(p<0.05). 以上のことよりラット胎仔の赤血球由来O・__2^^-値は虚血時間の延長に伴い上昇し, 母獣にも影響を及ぼす可能性が示された. SOD活性は10分群では細胞内におけるナイアシン系補酵素がelectron donorとして慟くためSOD活性が高まるが, その後, 虚血時間の延長に伴いO・__2^^-の増加, NADHなどの消費が増加しSOD活性が低下すると考えられた. 組織障害の原因といわれている過酸化脂質濃度は脳組織では10分群で上昇を認め, 肝組織では20分群で上昇を示した. すなわち胎仔脳は肝と比較してOSに陥りやすいことが判明した.
- 1996-02-01
著者
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