出生直後の新生児心電図に関する研究
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概要
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新生児心電図は出生後の新生児循環系の子宮外肺呼吸への適応過程をよく反映するものと予測されるが, 出生直後の変動が著しい時期の新生児心電図についての報告は殆んどない. 著者はまず131例の新生児について出生時から生後5分にわたりその心拍数変化を連続的に観察した. 次いで頭位分娩で体重2501g以上Apgar指数8以上の新生児30例について生後5分から出生当日を主として生後7日に至る標準肢及び単極胸部誘導心電図の変化を経時的に観察した. その結果まず生後5分間の新生児心拍数では, 1)正常新生児でも娩出時には毎分73の徐脈が認められその後心拍数が増加し30秒以後安定した160〜170の頻脈がみられる. 2)出生直後の心拍数変動は児の一般状態即ちApgar指数とよく相関しその低い児では長く持続する徐脈がみられ心拍数が不安定である. 3)心拍数の変動は呼吸の確立及び安定とよく相関するが分娩様式, 生下時体重等とは密接な相関関係はない. 次に生後5分から7日迄の新生児心電図の観察では, 1)生後5分では毎分175の頻脈がみられその後次第に心拍数は減少するが, これに伴いP, PQ, QRS, QT時間が延長し, Tが波高を減ずる. Pはやゝ高い. 胸部誘導ではV_1のTが陰性又は二相性より次第に陽性に転じて波高を増し, V_5のTは陽性が多いが時間と共に波高を減ずる. V_1のR/S比は1以上, V_5では1以下が殆んとでいずれもこの時期ではR/S比は大である. 2)生後24〜48時間では心拍数は122と最低となり以後増加して生後7日には135となるが, この時期ではPQが短縮し, QT及び「QTc」は生後48時間で最高となった後短縮し, T波高が増大する. 胸部誘導ではV_1のTが陰転化し, V_5のTの波高が増大する. V_1及びV_5のR/S比は生後2〜6時間で最小となった後生後7日に向って増大する. 3)この様に新生児心電図ではほぼ生後5〜10分の間と, 24〜48時間の間とに二つの変換点が認められ, 特に胸部誘導において著明な変化がみられた.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1965-09-01