^<60>Co 腔内近接照射による骨盤内リンパ節の被曝線量に関する研究
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概要
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子宮頚癌に対する放射線治療に際して, 子宮腔内近接照射(以下腔内照射と略)を行う場合, 線源支持体である子宮の偏位, 転位又は偏転位によって骨盤内の等量曲線は左右非対称的となり, 従って左右の同名リンパ節に又前傾並びに後傾によって各リンパ節や膀胱, 直腸の被曝線量に差を生じることは当然考慮される問題である. 著者は当教室の^<60>Co腔内照射術式について実験的に線源位置の変化に伴う等量曲線の変化を水ファントーム中に於て求め, 且つ人体女性骨盤内に設置した下腹節, 外腸節, 閉鎖節, 深鼡径節並びにTod & Meredithの云うB点の被曝線量をReed cartis社製シンチレーション型レントゲンプロピトロン線量率計を用いて測定した. 即ち線源が正中線に一致している場合, 等量曲線も左右対称的で最も理想的な位置である. 又線源が何れか一方に偏位, 転位又は偏転位した場合は等量曲線もその方に傾き, 左右の線量に可成りの差を生じる. 線源の前傾によって膀胱, 後傾によって直腸が多く被曝され, 殊に直腸は軽度の後傾で強い被曝をうける. 一般に前傾がリンパ節に対する被曝は大であるが膀胱の被曝が大となるしB点線量は漸減するので, 実験的には線源が正中線にあって0°から前傾20°までが最も効果的な角度と思われる. 腔内線源が偏位するほど左右の線量差も益々大となり, 殊に外腸節が著しい. 当科入院中の頚癌患者13例につき^<60>Co小線源挿入後, レントゲン管球移動撮影法で腔内線源の配置状態を検べると前傾は9例で全症例の69.2%, 後傾3例で23.1%, 0°1例で7.7%, 偏転位12例で92.3%, 正中線上にあるもの1例で7.7%であるが, 線源が正中線上にあって前後傾0°の所謂標準状態のものは1例もなかった. 各症例の線源配置状態を水ファントーム中に復元してB点並びに各リンパ節の被曝線量を測定すると左右差異あるものが多い. 次いで上述の症例について^<60>Co挿入のまゝ開腹し, 子宮体を可及的自然のまゝ広靭帯を展開してリンパ節の被曝線量を実測し, 同様に左右差を認めた. その実測値とファントーム値とを比較するためのファントーム値を100とすれば実測値では下腹節160, 閉鎖節131, 外腸節81, 深鼡径節118と誤差を生じたが, その差異は各個人によって骨盤の大小, リンパ節の位置, 大きさや拡がりが異ること, 線量計の置き方, 麻酔や筋弛緩剤の使用に加えて術中骨盤高位にしたための線源の移動等が考えられる. ^<60>Co遠隔照射による各部位の線量と, 腔内照射による同部位の被曝量(ファントーム値)とを合算して総線量とし, 上述の12例について検べるとB点は4470〜5525γ, 下腹節3807〜4757γ, 閉鎖節4298〜5179γ, 外腸節4118〜5780γ, 深鼡径節3956〜4749γの範囲内にあった. 各リンパ節とB点線量とを比較して見ると下腹節はB点の84.5%, 閉鎖節93.6%, 外腸節93.2%, 深鼡径節85.6%と概してリンパ節線量が少い. B点並びにリンパ節の総線量を左右比較して見るとB点0〜922γ, リンパ節0〜776γの差異があった. 例外的にB点線量が左右同量でも左右同名リンパ節線量は必ずしも同量でなく, B点線量の差が大であっても同名リンパ節の左右差は大とならず, 偏位側がむしろ少い症例もあった. これは腟内線源の位置如何によるものと思われる. この様に線源配置状態が個々によって異り, 症例の多くが位置異常であるので腔内照射を行うに当っては必ずレ線撮影によって線源の配置状態を知り, その状態を前記ファントーム中に復元して各部位の被曝線量を測定し, 左右骨盤内が均等に照射される様に, 後続する遠隔照射術式を個人化すべきである. しかし浸潤例には副作用のない限り, 大量を照射した症例の予後が良好であったので, 末期癌の如きは左右均一に照射する以外に, 浸潤側をより大量照射する様に各症例について検討している.
- 1965-04-01
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