冬眠カクテルの吉田肉腫に及ぼす影響に関する実験的研究
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概要
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種々の冬眠剤の悪性腫瘍に及ぼす影響は多数の研究者によって検討されて来たが, その結論は一定しておらず, その作用機序については想像の域を出ない現状である. 著者はラッテに種々の環境温においてChlorpromazineとPromethazineの等量混合溶液を投与して体温を測定し, 冬眠剤は動物の体温調節機構を麻痺させるものであって, 環境温の高低によって実験動物の体温を正常値より上昇あるいは下降せしめ得, なお環境温によっては冬眠剤投与後も正常値を保たせることも可能であることを示した. 次に吉田肉腫を腹腔中に移植したラッテに同様の冬眠剤を投与し, 肉腫細胞分裂率は投与後高体温の下では激減し, 正常体温では変化なく, 低体温の下では漸増することを見た. 更に吉田肉腫を移植したラッテに冬眠剤を投与し, 数日間低体温状態に陥らしめると生存期間は延長し, 腫瘍の発育は抑制せられる. 冬眠剤投与後正常体温及び高体温を数時間維持せしめた場合には延命効果は認められなかった. 以上の実験結果より, 冬眠剤はその投与後の体温変動がなければ, 腫瘍細胞に影響すること僅微であるが, 体温変動特に体温下降すれば著しい影響を与える. 従って冬眠剤は腫瘍に直接働いてこれを抑制するのではなく, その体温作用を通じてであることを明らかにした.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1965-01-01