妊産褥婦, 特に晩期妊娠中毒症の血漿脂肪酸構成に関する研究
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概要
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脂質代謝の重要性は近時妊産婦栄養問題と関連して特に認識され, エネルギー源だけではなく, 組織構成成分としても注目されている. 私はガスクロマトグラフィーにより, 健康非妊婦, 正常妊婦, 産褥, 重症妊娠悪阻, 晩期妊娠中毒症等の血漿, 胎盤, 臍帯血及び母乳等の脂肪酸構成を検討し, 興味ある結果を得た. 血漿では健康非妊婦, 正常妊婦, 産褥の脂肪酸構成はかなり恒常性が保たれているが, 晩期妊娠中毒症, 重症妊娠悪阻ではリノール酸百分比が減少し, パルミチン酸とオレイン酸の比率が増加し, リノール酸/オレイン酸比が最も著明な変化を示すことを見出した。また臍帯血及び胎盤の脂肪酸構成では晩期妊娠中毒症, 流早産等でリノール酸の著減と, 炭素数20の不飽和脂肪酸の増加を認めた. 一般に臍帯血及び母乳中のリノール酸量は低い. リノール酸は必須脂肪酸の1つで, 動物体内では生合成されず, すべて体外性であると考えられている。現在動物体内における脂肪酸の相互変換或いは選択的吸収, 選択的破壊についての知見は十分でないが, 動物の恒常性を保つ意味からも, 動物体内における脂肪酸相互の平衡の調節中枢という様なものの存在が推定され, これを介して晩期妊娠中毒症或いは流早産と, 血漿リノール酸低下の間に密接な関連があるものと考えられるリノール酸を高度に含有する純良植物油を妊婦に対して供給することは, 妊娠末期の経過と胎児, 新生児の発育に良好な影響をもたらすものと思考される.
- 1964-09-01
著者
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