子宮収縮機構のエネルギー代謝学的研究特に性ホルモン並びに妊娠の影響
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概要
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子宮筋の収縮機構の解明は妊娠の持続, 分娩発来機転等との関連に於て産科学上重要な課題であり, 従来幾多の研究が報告されて来たが, それらの知見をもってしても尚不明な点が多い. そこで著者は成熟雌性家兎の卵巣ホルモン投与時並びに妊娠時の摘出子宮筋に筋収縮エネルギー源となる代謝の阻害物質であるIAA, DND, NaN_3の作用時, 又無酸素状態, ブドウ糖除去時に交流刺激による等尺性収縮を独自の方法で記録し次の成績を得た. 1. 2mMIAA作用時 : 張力の増強, 収縮波形の変化を示さず, 収縮は不可逆的に消失した. 電気刺激に対する反応性が完全に消失するまでの収縮回数は卵巣黄体両「ホ」併用群が最も多く, 卵胞「ホ」群, 黄体「ホ」群の順であり, 卵胞「ホ」群, 黄体「ホ」群の各長期群のそれは夫々の短期群より多かった. 2.5×10^<-2>mMDNP作用時 : 初期に張力の増強と収縮波形の変形を示し, 収縮は可逆的に消失した. 卵胞「ホ」群では収縮回数は増加し, 特に長期群は著しかった. 黄体「ホ」群のそれは長期群のみ僅かに増加し, 短期群では増加せず, 卵胞黄体両「ホ」併用群は卵胞「ホ」群と黄体「ホ」群の中間にあった. 3. 2mMNaN_3作用時 : 初期の張力の増強及び収縮波形の変化はDNPのそれと略々同様であった. 卵胞「ホ」群の長期群, 短期群とも収縮回数は明かに増加したが, 黄体「ホ」群では対照のそれと有意の差を認めなかった. 4. 妊娠子宮に対するIAA, DNP及びNaN_3の夫々の胎盤附着部と非附着部に及ぼす影響に差は認められず, 各々の収縮回数は明かに増加した. 5. ブドウ糖除去, 並びに無酸素状態に於ける子宮収縮回数は明かに減少した. 以上の如く, 卵巣ホルモン及び妊娠は収縮系の収縮エネルギー代謝に関係し, 卵胞ホルモンはその系を亢進し, 黄体ホルモンはあまり変化を与えず, 代謝阻害剤であるIAAは主に収縮系に, 又DNP及びNaN_3は収縮系より寧ろ主に興奮系に作用するものと思われる.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1964-07-01
著者
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