家兎黄体及び間質腺の微細構造に関する実験的研究

概要

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卵巣黄体発生機序に関しては, Baerの結合織説, Bischoffの上皮説, Waldeyerの混合説以来各種動物につき幾多の研究発表があるが, 未だ定説をみるに至っていない. 著者は黄体発生機序の解明のために, 排卵前及び人工排卵後の家兎胞状卵胞の顆粒膜細胞, 内莢膜細胞及び両者間に存在する基底膜の態度を位相差顕微鏡的, 電子顕微鏡的に追求し, かつ人工排卵後5日目, 妊娠初期, 中期, 後期の家兎黄体の微細構造を観察し, 更に処女家兎, 排卵前後, 妊娠初期, 中期, 後期家兎間質腺細胞に解析を加え, 黄体細胞との類似性, lipid又はSteroidの産生に興味ある所見を得た. 即ち排卵前胞状卵胞に於ては顆粒膜細胞は変性初期像を示し, 排卵と同時に大多数は卵と共に卵胞外に流出消失し, 残留せる細胞も漸次変性消失する. これに反し内莢膜細胞は排卵前より, 明瞭な管状のCristaeを有する糸粒体, 微細小胞状又は管状の時によじれを示す小胞体等黄体細胞に特徴的な構造を認め, 排卵後も内莢膜細胞は肥大増生し, 黄体細胞を形成する. 又基底膜は排卵前初期胞状卵胞では顆粒膜細胞, 内莢膜細胞間に平滑な模様構造として認められるが, 排卵直前では波状を呈するようになり, 排卵直後は高度の波状屈曲を示し, 離断を認めるが, 顆粒膜細胞, 内莢膜細胞間に明かに存在し, 両者を区別するが, 黄体形成に従い, 早期に消失する. 以上の点より家兎黄体細胞1は内莢膜細胞より形成されると結論する. 家兎間質腺細胞は明暗二種の細胞に大別され, 明細胞は平滑な核膜, 小胞状の小胞体と明るい細胞質基質が, 暗細胞では波状の核膜, 拡張した小胞体と電子密度の高い網状の細胞質基質が特徴的であるが, 大部分は両者の中間型と思われる細胞よりなる. 妊娠初期, 中期の間質腺細胞は黄体細胞と非常に類似する絵粒体及び小胞体を有する. 又黄体細胞, 間質腺細胞のいずれにも, 不定形の電子密度の高い顆粒及び糸粒体よりの移行を思わせる限界膜を有する電子密度の高い類円形の顆粒を認めたが, これらとlipid又はSteroidの産生につき論じた.
社団法人日本産科婦人科学会の論文
1964-06-01

家兎黄体及び間質腺の微細構造に関する実験的研究

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