人胎盤絨毛組織におけるアンモニア生成とその処理機構について
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概要
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人胎盤が絨毛間腔を通じて母児間の栄養物質代謝に重要な役割を果していることは知られた事実であるが, 胎児蛋白・核酸代謝の亢進に伴なう絨毛組織の機能についての酵素学的な研究は極めて少ない. 私は人胎盤絨毛組織における蛋白及び核酸代謝に与かるアンモニアの生成とその処理機構を究明せんとして, 酵素学的に次の実験を行なった. 1. 人胎盤絨毛組織におけるアデニール酸及びアデノシン脱アミノ酵素 : 人胎盤絨毛組織にはアデニール酸, アデノシンをそれぞれ脱アミノ化する酵素が存在することを認め, その至適pHはそれぞれ5.9〜6.3と7.0であることを知った. 2. 人胎盤絨毛組織におけるグルタミナーゼ : 人胎盤絨毛組織にはグルタミンの脱アミド反応の存在を認めることができなかった. 3. 人胎盤絨毛組織におけるグルタミン合成酵素 : 人胎盤絨毛組織にはグルタミン合成酵素が存在すること, 及びその至適PHが7.0であり, 本反応にはATPの添加が必要とされ, Mg⫲の添加が必要とされ, F-の添加によって本反応の阻害されることを知った. 4. 人胎盤絨毛組織におけるグルタミン酸脱水素酵素二人胎盤絨毛組織にはグルタミン酸脱水素反応の逆反応が存在し, その至適pHは7.0〜7.5であることを知った. 5. 人胎盤絨毛組織における尿素生成反応 : 人胎盤絨毛組織にはアルギナーゼが存在し, その至適pHは9.5であること, 及びMn⫲の添加によって著しく賦活されることを知った. 又, 人胎盤絨毛組織においてはオルニチン及びチトルリンとアンモニアからの尿素生成は微量ではあるが認めた. 従って人胎盤におけるアンモニアの生成にはVilleeらの証明したグルタミン酸のほかにアデニール酸及びアデノシンが関与し, アンモニアの処理に向ってグルタミン合成反応やグルタミン酸脱水素反応の逆反応などが行なわれていることを知った.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1964-05-01
著者
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