産婦人科領域における血清Properdinに関する研究
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概要
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侵襲に対する生体の防衛機序の一部が, 血清成分によっていることは既に知られていたが, その本態については, 必ずしも明確な解答が得られていない. 1954年, L. Pillemerは, 血清補体第3成分の中に, 生体の非特異的防衛機序に関与するProperdin-Systemが存在することを提唱し, Properdin定量にZymosan Assayを創案した. その後, 種々の改良法が試みられてはいるが, Properdinの血清学的定量法は, 極めて熟練した技術を要するのみならず, 優秀な試薬Rp及びR_3血清の作製と, その原血清の人手が困難なこととが相俟って容易でなく, ために本研究の進展が妨げられて来た. 著者は, McNallの方法に準拠し, 試薬Rp血清の作製には, 特異的にProperdinを吸着するBentoniteを利用し, 臨床的応用に容易な変法によって, 未だ充分検討されていない産婦人科領域の各種疾患における血清Properdin値を測定して, 若干の知見を得たので報告する. 測定方法:Zymosanによって不活性化される補体第3成分(C'_3)は血清中のProperdin量によってきまるので, 補体成分(C'_1, C'_2, C'_3, C'_4)を過剰に含み, Properdinを含まない血清Rpに被検血清を加え, そのC'_3を測定し, また別に前述の血清Rpに被検血清を加えたものに, 更に一定量のZymosanを加えたもののC'_3を比較して, このC'_3の不活性化の割合から被検血清中のProperdin量を測定した. 実験成績並びに結論: (1)健康人27例(女子15例, 男子12例)では性別によっては大差なく, 70単位を中心として, 85単位から54単位の間に分布し, 1週間間隔で2回採血した9例では5例が同一の値を示し, 他の4例でも3単位以上の差はみられなかった. (2)正常妊婦41例を妊娠時期により, 前期, 中期, 後期にわけると, 前期の平均値45単位, 中期35単位, 後期39単位で, 健康人に比し低下の傾向がみられた. (3)絨毛性疾患群23例(胞状奇胎の分娩又は中絶後13例, 破壊性胞状奇胎2例, 絨毛上皮腫8例)では, 奇胎分娩又は中絶後13例中2例が50単位以下の低値を示し, その中の1例は, 破壊性胞状奇胎を続発し, 子宮単剔術及び化学療法を受けた. 本症例ではその間のProperdin値の推移を検討した. 絨毛上皮腫患者8例中6例が50単位以下の低値を示した. 最近経験した3例の絨毛上皮腫患者のProperdin値の推移をみると, その臨床経過と或程度の関連性がみられ, 破壊性胞状奇胎や絨毛上皮腫患者では血清Properdin値は多くの場合低下している. (4)癌腫の血清Properdin値は一般に低値を示すものが多いが, 特に子宮頚癌患者41例の成績では, 50単位以下は24例(58.5%)で, 進行期別平均値はI期・II期50単位, III期48単位, IV期34単位であった. 然しC.P.L.分類や一般的臨床事項との間には関連性は認められない. 更に頚癌の手術及び放射線療法におけるProperdin値についても観察した. (5)良性疾患患者31例の血清Properdin値は, 略々健康人値の分布内に存在したが, 3例の子宮外妊娠の中絶患者ではいずれも低値を示した.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1963-12-01