子宮内避妊器具に関する研究 : 特に太田リングとループとの比較研究
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概要
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近年IUDの普及に伴い多数の研究報告を見るが, 形態や大さを異にした器具について長期間系統的に比較検討した報告は少いので, 挿入時頚管拡張の有無及び尾部の存否の点で異なる太田リングと Lippes Loop. B 及び C とを使用して, 臨床成績及び作用機序の一端を考察して, 次の結果を得た. 1) 器具使用年令は, 30〜34才が最も多く, 妊娠回数は3回, 分娩回数は2回のものに使用頻度が最大であつた. 2) 器具挿入直後及び使用中の副作用としての出血傾向は, リングより Loop の方に多く, 疼痛の訴えには差がない. 合併障害は主として1年以内に留まり, 以後は急減する. 3) 器具脱出率は, 若い年代に多く, リングと Loop とで有意差があり Loop が高率である. 妊娠率と除去率は, 特に差を認めない. 4) 器具挿入例の子宮内膜は, 31.2%に異常所見を認るが, 特に病的障害を発するような変化ではなく, また使用年数の増加に伴つて異常所見が増加することはない. 5) リング例144例に造影法で子宮腔内リングの位置を確認した結果, 位置形態の異常例に明らかに有訴率の高いことを認めた. 6) 器具除去後1年以内に85.3±7.5%の高率に妊娠の成立を認め, 除去後は充分に妊孕力が保持されている. 除去後の妊娠経過も特に異常を認めなかつた. 7) 作用機序考察のため, 長期使用3例について, 2月経周期間, 諸ホルモン定量を行つて卵巣機能を検討したが, 1例に pregnanediol のやや低値をみた以外BBT,排卵等皆正常であつた. 次に4羽の家兎を用い, 一側子宮角に異物として1cm長のポリエチレン棒を挿入し, 日本光電製作の脳波計にて, 子宮角, 卵管の運動を検したところ, 挿入側で3分後に30秒に1回, 150μV 相当の単一運動をみたが反対側では何等運動の様な変化を認められなかつた. これより機序考察は動的変化よりは静的な変化に求められる.
- 1973-01-01