尿中Estriolの胎児胎盤機能検査への応用に関する研究 : 附 羊水内負荷による同機能検査法
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概要
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妊婦の尿中Estriol (以下Etと略) 値は, 胎児胎盤系機能を知る上での有力な指標とされている. 著者はAmberlite XAD-2によるEtの簡易測定法を検討し, 臨床的に十分使用し得ることを認め, 本法を妊婦並びに胎児管理の目的に応用した. 一方, 血清酵素活性を検し, 尿中Etとの相関のもとに同系機能の綜合的見地からの判定法を勘案し検討を加えた. また, Et前駆物質Dehydroepiandrosterone (DHEAと略) を羊水内に負荷し, そのEtへの転換を検し同系機能のdynamicな検索を行なつた. 1) 妊婦尿中Etは妊娠中期より徐々に増加し, 正常妊婦の週数別推移では39週をピークに下降の傾向を示すが, 分娩日から逆算してみると分娩直前まで増量し, 下降の傾向はみられなかつた. 2) 尿中Etの正常下限値は妊娠6ヵ月で5mg/day, 9ヵ月以後で10mg/dayであり, 母体内児死亡並びに無脳児例では, 妊娠末期においても4mg/day以下の低値を示した. 3) 妊娠中毒症の尿中Et levelは症状の軽症, 重症の程度とほぼ一致し, Et値が正常なものは無事成熟児を生産した. 4) 予定日超過 (以下予超と略) 例のEt値は, 正常正期産例と比べ特に変化なく, 予超のみの原因によつて胎盤機能不全等を来した症例には遭遇しなかつた. 5) 尿中Etと血清耐熱alkaline phosphatase (HSAPと略) 並びに1-cystine aminopeptidase (CAPと略) との相関から同機能をみると, 32週以後の正常妊婦はEt 20mg/day以上, HSAPは10〜20KA, 8〜20mg/dl/hrの間に大多数が分布し, Et 10mg/day, HSAP 5KA, CAP 4mg/dl/hr以下には分布しなかつた. 6) 羊水内にDHEAを負荷し, 母体尿中Estrogen (Eと略) への転換を検索したところ, 正常妊婦では負荷後24〜48時間にE3分画とももつとも増量し, Et値は投与前の25〜99%の増加をみた. 無脳児例も負荷により増量したが, 母体内児死亡例では増加を認めなかつた. 7) 以上の成績から尿中Etをはじめ, 上述の各検査法を適宜併用することにより, より胎児胎盤系の機能なdynamicに判定し得るものと考えられる.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1972-06-01
著者
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