胎児,新生児の音響刺激に対する誘発反応について
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概要
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Smythはダイナミックスピーカの振動板の直前に錫箔をはり付け,これを介してスピーカを妊婦の腹壁に音響刺激を与え,その直後から胎児心拍数が急激に増加し,とくに500〜1000Hzの音に最もよく反応することを報告した.今回妊娠末期の妊婦296例に実施して同様な事実を認め,とくに250〜500Hzによく反応する成績を得たが,妊娠28週までのもの,〓帯巻絡のあるもの,重症妊娠中毒症で児の予後の不良なものには本反応の陽性率が低下することを認め,児の予後判定に参考になる検査法と考える. Smythの原法ではスピーカを使用し,しかも励振に対し量的な監視が行われていないため周波数を変えた場合,必ずしも一定の音響刺激が与えられているとは限らない.そこで予備的な種々の実験を行なつたところ,励振器として加振器(振動電機G-3型)を用い振動系の速度を監視し得る方法をとり振動系の可動部の端にテフロンのペロッテ(ψ=30m/m)を取り付け,これを介して,加速度一定として励振し周波数を変えて実験を行えばSmythの方法による場合とほぼ同様の結果が得られることが判明した.よつてこの方法を妊婦を対象とする音響刺激の実験に応用した.その成績はスピーカ使用の場合とおよそ同一の結果となつたが,試験周波数125〜8000Hzの実験において,とくに250〜500Hzによく反応した.その理由を考察するための一つの資料を得るため,次のような実験を試みた.即ち手,腕,腹部にペロッテを当て,同一条件下で作動させ,対側に振動ピックアップを装置し各周波数における振動伝達の状況を調べた所,厚さ2.5〜5cmの手,腕では各種周波数の減衰程度はほぼ一様であつたが,厚さ15cmの腹部では250Hzの減衰が最も少なく,その前後は著しく減衰する事実をみとめた.この成績は音響刺激による胎児心拍数の反応と共通するものがあり,将来本検査の解明に役立つと思われる.
- 1972-04-01