妊婦におけるprogesteroneの代謝について
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概要
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妊娠時progesteroneの分泌が著増し, 妊娠の継続維持に与るとみなされ, しかもこれが胎盤によって積極的に転化生成されることについては疑いの余地はない. しかしprogesteroneの子宮筋濃度は意外に少なく, これは分泌されたprogesteroneが直ちに母児双方に移行し, それぞれの代謝器官によって転換あるいは代謝されるためと推定される. 著者は妊婦におけるprogesteroneの代謝について究明するため, 妊娠7ヵ月の中絶婦人7名にprogesterone-4-^<14>Cを静注し, 母体血ならびに臍帯動静脈血の放射性濃度を逐時的に検討し, 同時に尿中pregnanediolのそれについて測定し, さらにprogesteroneのproductionrateの算定を行ないつぎの成績を得た. A. 母体の静脈血におけるfree fractionの放射性濃度は投与30分まで急減するが, その後は漸減し, そのhalf life timeは平均41.25分であった. またglucosiduronate fractionのそれにおいては投与直後に漸増するがその後は漸減し, またそのhalf life timeの平均値は80分となり, sulfate fractionのそれでは投与直後に低下し以後漸増する傾向を認めた. B. 母体の静脈血におけるprogesteroneの逐時変化はfree fractionのそれに類似し, 投与直後に急増し, その後漸減するが, そのhalf life timeは55分, 47分であった. 20α-OH-progesteroneの逐時変化については投与後漸増し, 30分後にピークとなり, その後漸減するのでprogesteroneのそれとは対跳的な推移を示すといえる. C. 臍帯動静脈のfree fraction濃度は投与後10分〜27分では母体血のそれに比べて高い, 臍帯静脈血のそれにおいては, 投与後15分で低下したが, その後の測定値はいずれも母体の静脈血に比べて高い. glucosiduronate fractionにおいては. 母体血のそれに比べて著しく低下した. 臍帯動脈血のsulfate fractionにおいては母体血のそれに比べて高くまたその値を持続した. しかし静脈血のそれにおいてはこれと対跳的な低値を示した. D. 尿中放射性pregnanediolについてはその投与量の平均値が19.024%でありこれが5日間に排出されるが, その多くは分娩後3日以内に排出される. またこの期間におけるprogesteroneのproductionrateは平均41.88mg/dayであった. 以上のことから胎盤によって分泌されるprogesteroneは直ちに母児双方に移行し代謝されるが, 母体側ではおもにglucosiduronate, 胎児側ではsulrateとなるため, すみやかにその生物学的活性を失うものと思われる. したがって胎児胎盤系におけるprogesterone代謝にはsulfokinase-sulfatase系と酸化還元系とがありこれによってその生物学的活性が調整されるものと推定される.
- 1968-09-01