妊婦の尿中17KS分画の動態について
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概要
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妊娠時のホルモン動態の一端を検討する目的で, 元来副腎皮質機能検査の1つとみなされていた尿中17KSについて, その分画法を検討し, それにより10分画に分け, 正常非妊婦, ついで妊娠各期, 褥期について測定し, また近年特に問題となりつつある Feto-placental unitにおけるsteroidogenesisについての検索の目的で, 無脳児妊婦尿について測定し, 次の結果を得た. 1) 総17KS値は妊娠経過に伴って増加の傾向があり, 産褥第1日で急減し, 3日後再増加し, その後漸減傾向を認めた. 無脳児妊娠例においては, 対照月数例に比して1030.2γの減少を認めた. (危険率5%で有意) 2) DHAは妊娠経過とともに増加する傾向があり, 特に妊娠10ヵ月においては, 正常非妊婦に比して, 394.3γの増加を認めた. (危険率5%で有意), 褥期においては減少する傾向があり, 無脳児妊娠のそれにおいては, 対照妊娠例に比べて500γの減少がみられた. (危険率5%で有意) 3) androsterone, etiocholanoloneは妊娠末期において減少する傾向があり, 褥期で1時的に増加し, その後, 正常非妊婦のそれに回復する. 4) 11-Oxygeneted 17-KSは妊娠中期以降特に増加し, 褥期に減少する傾向が認められた. また無脳児妊娠例においては, 対照妊娠例に比して低値を示した. 以上の成績により, 妊娠のそれにおいてはEstrane系, Pregnane系のみならず, Androstane系においても, その代謝が亢進して, その一部が尿中へ排泄増加するものと推測される. また褥期に減少し, 一週間後ほぼ正常非妊時にもどり, さらに無脳児妊娠のそれにおいても, 総17KS値ならびにDHA値に著明な減少が認められることより, 妊娠時のSteroidogenesisには胎児副腎皮質が積極的に関与しているものと推定された.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1968-06-01