白血球混合培養による産科領域の細胞免疫学的研究
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概要
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2種類の白血球混合培養で,お互いの細胞の間に組織適合性抗原の差があると,リンパ球の幼若化がみられることが知られている.著者は白血球混合培養を行い,^3H-thymidineの細胞核への取り込みを指標として,(1)培養期間,血液型,唾液血液型(ABO)物質凝集阻止力価,絨毛組織抽出液のリンパ球反応への影響,(2)正常妊孕夫婦,原発性不妊症夫婦,習慣性流早産夫婦,絨毛性腫瘍夫婦における夫婦間免疫,(3)性染色体異常者の免疫学的動態について検討し,次の如き結果を得た. 1) ^3H-thymidineの取り込みは培養開始5〜8日目に最高を示し,血液型(ABO, MN, Rh),唾液血液型物質凝集阻止力価および性別とは関係なく,正常絨毛および胞状奇胎,絨毛上皮腫の組織抽出液もリンパ球の反応に影響を与えなかつた. 2) 夫婦間の組合せである正常妊孕群,原発性不妊症群,習慣性流早産群,絨毛性腫瘍群と,非夫婦間で任意の組合せである対照群における^3H-thymineの取り込み率を検討したところ,正常妊孕群では4.7±6.5%と対照群の6.6±5.5%より低く,習慣性流早産群では9.2±6.5%,絨毛性腫瘍群では9.3±7.1%であり,原発性不妊症群は10.1±6.8%と最も高い値を示し,対照群,正常妊孕群との間に有意差が認められた(P<0.05).この結果から夫婦間の組織適合性抗原の差異が流早産や不妊症の原因となつていること,絨毛性腫瘍ではその発生,発育にも影響を与えていることが示唆された. 3) 性染色体異常のうち,45, Xのリンパ球は核型正常リンパ球とほぼ同程度の反応であつたが,47, XXYのリンパ球では有意に高い反応を示した(P<0.05).同様の結果は21トリソミーでも報告されており,染色体数の増加は細胞免疫性の増大に関与していることが示唆された.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1971-06-01
著者
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