新生児の胃内容酸度とペプシン
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概要
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従来より, 新生児の胃酸に関する研究は多いが, ペプシンに関するものは少ない. そこで, 生後1ヶ月間の新生児の胃内容の酸度とペプシン値を調べた結果, 胃酸に関しては, 哺乳前の, 成人なみの高酸から, 生後5〜6日目迄に急激に低下した. この現象は, 適応過程における新生児の分娩による母児の生体の歪 (所謂ストレス) の結果と考えられる. ペプシン値は, 哺乳前群では成人値の1/4のものが, 生後5〜6日目では成人値の1/2.4と, 生後の蛋白摂取に適応して日令とゝもに急速に高まり, 胃酸の態度とは逆であった. 乳幼児や成人とは異なり, 哺乳前新生児群の胃内容においては総酸度とペプシン値が逆相関を示しているが, 生後5〜6日目では既にそれら2つが正の相関を示し, 尋常の姿となっていることはこの時期の変動の激しさを物語るものと言えよう. 空腹時胃内容量は日令とゝもに減じ, 今回私が始めて行なった新生児の Katsch u. Kalk法による胃内容遊離塩酸の反応をみても, 生後1日目と5〜6日目では明確なその型の相違があり, 生後速やかに胃の運動や排泄機能が活発化する様子が知られた. また, 調製粉乳, 母乳や5%ブドー糖の3栄養法の違いによる胃内容の酸とペプシン値の比較を行なったところ, 5%ブドー糖群でそれらが高く, したがって, 濃度の相違は試験食の粘稠度その他の因子の差によって生ずる胃よりの試験食排泄速度の違いによっておこる, と考えられた. 今迄の教科書には, 母乳は牛乳よりも胃停滞時間が短かい, と記載されているが, 調製粉乳は母乳よりさらにそれが短かく, 母乳が胃内で充分消化されるべく胃内に停滞する生体の有機現象とも思われた.
- 1968-02-01