尿中絨毛性gonadotropinの生物活性と生化学的性格に関する研究 : 第1篇 正常妊娠各時期の尿中gonadotropinの性格について
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概要
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性腺刺激ホルモン (gonadotropin) には下垂体前葉に由来するhuman pituitary gonadotropin (以下HPGと略記)と, 絨毛組織に由来するhuman chorionic gonadotropin (以下HCGと略記) とがあり, このうちHPGに関しては今日follicle stimulating hormone (以下FSHと略記), luteinizing hormone (以下LHと略記), luteotropic hormone (以下LTHと略記), の3種類のそれぞれ異なった性状を有するものがあることが確認され, その構造の究明もかなり進んでいるが, HCGの本態については未だ解明されていない点が多い. HCGが生物活性の面でLHに似た性質を有することはすでに古くから知られており, 基礎的にも臨床的にもLHとして使用されて来た. しかし免疫学の進歩に伴いHCGの本態が未解明のままに免疫学的測定法が導入されるにおよんで種々の矛盾が生じ, 生物学的測定法と必ずしも平行しないという報告がされる様になり, HCGの性質をさらに詳細に検討する必要が生じ, 多くの研究の結果HCGの生物学的性格にはLH様活性の他に, FSH様活性, LTH様活性等が存在するという報告がみられるようになったが, このFSH的な性格はHPGの混在であろうとする説もある. そこで著者は妊婦尿中gonadotropinについてcross linkage dextran gel filtration法とpolyacrylamide gel electrophoresis法を用い, できるだけ自然な状態でこのホルモンの生物学的, 生化学的性状を追求し次の如き結果を得た. 即ち, 妊娠前期では尿中HCGはFSH的性状の強い単一のpatternを示し, 中・後期になるに従い漸次LH的性状となるが尚FSH的な分画をも有し, このFSH dominantの分画は下垂体性gonadotropinの分画外にある. またこのFSH, LH活性はいずれの方法においても各々完全に独立した分画には分離し得ない. これらの成績から, 妊婦尿中HCGは生物活性の面から決して単一なものではなく, 生物学的活性の多様性, さらにはその分子構造上多様性を示すことを認めることができた.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1968-12-01
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