妊婦の滲透圧調節に関する研究
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概要
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妊娠時の水貯溜傾向を滲透圧調節の面より解明するために, 妊娠8ヵ月以降の正常, 異常妊婦にFishbergの濃縮・稀釈試験を行ない, これを分析して正常非妊婦と比較した. 対象は, 正常非妊婦8名, 正常妊婦9名, 浮腫妊婦12名, 妊娠中毒症妊婦9名である. 濃縮試験は, 夕方6時乾燥食摂取後, 12, 13, 14時間後に採尿, 最後に採血を行なった. 稀釈試験は水1200mlを30分以内に飲用せしめ, 飲用直前より30分毎に採尿, 前後及び1時間毎に採血し, 4時間後まで続けた. 血清滲透圧は14時間脱水後, 正常非妊婦277.0±4.4mOsm/kg H_2O, 正常妊婦266.9±4.4, 浮腫妊婦271.7±7.7, 中毒症妊婦277.4±10.2で, 正常妊婦, 浮腫妊婦に明らかなこ血清滲透圧低下がみられた. これは滲透圧中枢の水準の変化, 即ちlow level resettingと考えられる. 濃縮時の最大尿滲透圧は, 正常非妊婦990.5±163.9mOsm/kgH_2O, 正常妊婦743.2±145.8, 浮腫妊婦817.6±147.3, 中毒症妊婦939.4±248.4と正常妊婦に明らかな低下をみた. 濃縮時のCosm, T^C_<H_2O>には各群に有意差がなかったので, これは髄質血流の増大による髄質滲透圧勾配の低下が原因として考えられる. 稀釈試験における最低尿滲透圧は, 正常非妊婦55.6±8.4mOsm/kgH_2O, 正常妊婦51.4±18.6, 浮腫妊婦67.1±42.1, 中毒症妊婦277.6±192.8で, 中毒症妊婦にのみ障害をみとめた. 但し, 4時間尿量は, 正常非妊婦に比し, 正常妊婦, 浮腫妊婦, 中毒症妊婦の順に著しい減少を示した. これは尿滲透圧の低下の割に一分間尿量の増大が著しくないこと, 最大利尿の持続が短いことによる. 前者は尿細管における等張的再吸収の増大のためであろう. 最後に利尿パターンについて分析し, 遠位尿細管, 集合管のADH変動に対する感受性の異常を推測した.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1968-10-01
著者
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