新生児早期の嫌気性代謝に関する研究
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概要
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新生児早期の嫌気性代謝を究明する目的で生後30分間の新生児の下大静脈より採血し, pH, 有機酸, 血糖の同時定量を行ないその経時的変化を検討した. pH, 有機酸共に生後きわめて特徴的な推移を示し, pHは死亡群を除き生後5分にて最低値となり, 特に仮死群, 呼吸不全群では下降の傾向も強く正常経腟分娩群に比し有意差が認められた. 又正常帝切群では特徴的な経過をたどり, 終始経腟分娩群より低値を示すと共に生後20分以後では有意差が認められた. 有機酸についても死亡群を除き全群共に生後5分で最高値となり, 以後低下する傾向を示すが仮死群, 呼吸不全群ではその程度も強く生後5〜10分にて正常経腟分娩群と有意差が見られた. その他の分娩時異常群, 予定日超過群は両者の中間に位置し又正常帝切群との比較により分娩時の影響を明確に把握出来た. 血糖は正常経腟分娩群では, 有機酸の増量と逆相関がみられたが, バラツキが大きくpHほど明瞭でなかった. 又正常帝切群, 予定日超過群, 分娩時異常群は正常経腟分娩群に比し有意差は認められず, 呼吸不全群では有意に高値を示した. 以上のことから新生児早期の代謝環境は生後5分を界として嫌気性環境優位から好気性環境に移行し, 分娩時の影響は生後30分で回復すると考えられる. 又生直後の嫌気性解糖系亢進は分娩の影響よりもむしろ新生児の呼吸循環系確立までの時間的ずれが主因であろう. 次に嫌気性解糖系の指標として焦性ブドウ酸・乳酸比, 過剰乳酸, 過剰乳酸・pHの相関を検討し, 嫌気性代謝の亢進の状態を更に明確にすると共に臨床所見あの関連から新生児評価の指標となり得ることを証明した.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1968-01-01