妊娠時の血中 Pregnenolone 動態についての研究
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概要
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progesterone (以下prog.と略) が妊娠時著増するが, その産生機構についての主径路と, それに与る転化生成機構の実態については, 未だ明らかでない. よって著者はその径路と考え得る特に胎児胎盤循環血液中の pregnenolone から prog. への転換径路に着目し, gas liquid chromatography (以下GLCと略) を用い, pregnenolone の微量定量を行ない, 母体末梢血, 胎盤後血, 臍帯動静脈管血中の pregnenolone 濃度を測定し, それらの血中動態から, 胎盤における prog. の前駆物質である pregnenolone の胎児側分泌の割合と, それによる胎盤性 prog. 産生の関与の程度を検討したところ, A) 各血中 pregnenolone は非結合型及び硫酸抱合型で存在し, グルクロン酸抱合型では検出不能であった. B) 硫酸抱合型各血中濃度は, a) 母体末梢血漿100ml中, 妊娠40週で31.38±3.8μgとなりピークを示し, b) 胎盤後血では, 40週で36.9±3.83μgとなりピークを示し, c) 臍帯動脈管血及び静脈管血では, 各々40週で186.36±12.3μg, 137.29±6.03μgでピークとなり, また両者の間に有意の差を認めた. C) 非結合型のそれにおいては, a) 母体末梢血漿100ml中, 妊娠40週で9.77±3.56μgとなりピークを示し, b) 胎盤後血では, 40週で14.65±2.0μgとなりピークを示し, c) 臍帯静脈管血では, 41週で21.7±3.15μgとなりピークを示し, 臍帯動脈管血では, 40週で13.74±4.25μgとなりピークを示した. よって以上の臍帯動静脈管血中の gregnenolone 濃度の差より, 胎盤での pregnenolone の1日代謝量を試験的に計算すると, ほぼ25mgとなったから, 胎盤での prog. 分泌量を妊娠末期で 250mg/day とし, 胎児側より胎盤に供給される pregnenolone の総てが prog. に転換されるとすると, pregnenolone は prog. の1日分泌量のほぼ10%がその前駆物質として, 胎児側より供給されることになる. しかし母体末梢血濃度と胎盤重量との間, 臍帯動静脈管血濃度と新生児体重との間には, 一定の相関関係を認めることが出来なかった.
- 1970-06-01