Fetal distress に於ける胎児心拍数変化の臨床的意義に関する研究
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概要
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胎児心拍数の変化から, 変化の背景にある胎児生理を類推し, その結果を胎児予後の臨床的診断に供し得る可能性とその意義について研究した. 胎児心拍数は連続的に記録観察し, 子宮収縮との関係において心拍数変化を基準心拍数と類形分類化したパターンとに認識した. 各種の負荷実験即ち手指及び鉗子による児頭圧迫, 母体低酸素負荷, 高酸素負荷, 帝切時子宮動脈圧迫, 胎盤附着部圧迫, 臍帯圧迫, 硫酸アトロピン投与等を行ない心拍数変化の原因を分析し得た. 胎児末梢血PH, 臍帯動脈血PH及び Apgar 指数の面から心拍数変化と病態像の関係を解明した他, 分娩経過に伴う心拍数の経時的変化についても観察を行なった. これら研究から下記の結果を得た. I度(正常整脈)は基準心拍数 120〜164/分で, その変動は基準心拍数の±10%である. IIa型(随伴性頻脈)は子宮収縮時の一時的な交感神経刺戟による反応としての良性パターンで, 下降部児頭の高在から中在に多い. IIb型(持続性頻脈)は持続的な交感神経緊張によるもので, 基準心拍数 165〜169は軽度, 170以上は重症の低酸素状態を示す. III型(随伴性徐脈)は頭部圧迫, 臍帯の軽度圧迫による副文感神経優位の徐脈で, 中在より発生頻度は急増する. 陣痛間歇時心拍数が 165以上の時には末梢血pHは低値を示すが, それ以外は良性の徐脈である. IV, V, VI型は種々の原因による低酸素性の不良徐脈である. この型の出現が直ちに胎児危険の状態を示しているのではなく, その反復出現性と持続が問題である. 本研究により, 心拍数の変化から胎児生理の本態の側面を窺うことが出来た. そして, 心拍数の観察は末梢血PHの測定と両様相俟って, prospective な観点から臨床的に胎児予後判定の方法として極めて有用であることが判明した.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1970-06-01
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