妊娠ラットにおけるカルシウム代謝 : 特に母仔間の相関について
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概要
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"毋児相関よりみた胎児発育に関する研究"の一繰として, 妊娠時のカルシウム代謝を解明するために, 妊娠ラットに^<45>Caを投与し, そのカルシウム代謝を調べ, 同時に飼料中のN含有率を規制した場合にカルシウム代謝にいかなる影響をおよぼすかを検討した. つぎに, あらかじめ毋体骨に^<45>Caを附着させた未妊成熟ラットを妊娠させ, その胎仔への^<45>Caの移行を調べ, 同時に飼料中のN含有率を規制した場合に^<45>Caの移行にいかなる影響があつたかを調べ, 毋体骨より胎仔へのカルシウム移行の問題について検討を加えた. その結果はつぎのとおりである. 1. 毋体では妊娠初期からすでに, 妊娠末期における多量のカルシウムの胎仔への移行にそなえて骨組織にカルシウムを蓄積する作用がみられる. しかしカルシウム摂取量が十分でもN摂取量が不足の場合にはカルシウムの蓄積作用は十分ではなくなる. 2. 妊娠毋体がカルシウムを蓄積するために一面排泄率の低下がみられるが, N投与量を少なくすると, この排泄率の調節作用が十分発揮出来ないように思われる. 3. 肝臓では妊娠時カルシウム代謝についての特異はみられない. 4. 胎盤はカルシウムに関して単なる通過器官として存在し, 妊娠時カルシウム代謝についての特異作用はみられない. 5. 胎仔へのカルシウム移行は毋体N摂取量の低下が一定限度内では, 毋体のカルシウム蓄積作用が十分でないときでも毋体骨中のカルシウムを放出することによつて胎仔への移行量が減らないように調節している.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1970-11-01