腟内に投与された酢酸フェニル水銀の体内分布と胎仔への影響に関する実験的研究 : その2 臓器分布と胎仔移行

概要

論文の詳細を見る
酢酸フェニル水銀の腟壁よりの吸収状態, 臓器分布, 胎仔への影響を観察する目的で, ^<203>Hg合成の酢酸フェニル水腺(PMA-^<203>Hg)を主剤とする腟錠を作製し, 投与後逐時的に主要臓器(腎・肝・脳・心・肺・胃・脾・子宮・乳腺)並びに胎仔, 胎盤を摘出し, 腟壁からの本水銀の臓器内吸収量並びに貯溜量を血中濃度と平行して放射化学的検索法を用いて測定した. 摘出諸臓器中, 腎, 肝に多量の吸収を認めた. 腎に吸収された本水銀は血中濃度の消長とは不一致な長期間にわたる貯溜傾向を呈した. 肝, 心, 肺, 胃, 脾, 子宮においては本水銀は血中濃度の動態と平行し, 貯溜傾向はきわめて少なかつた. 脳は血中濃度に平行しない独自の吸収の型を呈した. 胎仔, 新生仔に与える影響を観察する目的で, 本水銀を妊娠第1日目に投与し, 妊娠末期の胎盤・胎仔への蓄積, 胎仔奇形, 新生仔の発育障害について観察を行なつたが, いずれも証明されなかつた. 以上の実験結果から, 本水銀を主成分とする避妊薬を長期間にわたり使用することは, 妊娠前の母体の腎障害の発生が憂慮される点からこのましくないと考える.
1970-11-01