新生児肺拡張過程に関する研究
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概要
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周産期死亡の原因として,肺換気異常が注目され,なかでも肺拡張不全が重要視されている.しかし分娩を契機とした新生児の肺拡張過程に関する研究は余りなく,種々の条件に左右されながら,どのような過程で拡張するのか興味あるところである.著者はこの点について,生存時間別,生下時体重別,人工呼吸実施例,硝子様膜の有無などに分けて,その拡張過程を検討した.福島医科大学附属病院産科で分娩した周産期死亡児肺について,5〜7μの薄切切片を作製し,ヘマトキシリン・エオジン染色を施し,各標本について写真用引伸機を用いて拡大焼付けし,呼吸気管支以下の開大数を一定条件下で概算したところ,次の所見を得た.1)1個の肺葉について,肺門部を含み,斜め放射状あるいは水平に切断した場合,これら両者の間に「肺胞開大値」の上で有意差は認められなかった.2)妊娠週数と肺胞開大との間には相関関係が認められた.3)生下時体重と肺胞開大との間には相関関係が認められた.4)生存時間と肺胞開大とは相関関係を有した.5)人工呼吸実施例と非実施例との間には,肺胞開大度に有意の差が認められ,人工呼吸非実施例の肺胞開大度は実施例のそれより大きいことがわかった.6)左右各葉間の肺胞開大に有意の差は認められなかった.7)硝子様膜を有する肺と有しない肺とでは,肺胞開大度に有意差が明瞭で,硝子様膜をもった肺の肺胞開大度はもたない肺のそれより小さかった. 以上のことから,新生児肺拡張過程の一端が知られ,更に硝子様膜が肺拡張過程に与える影響も明瞭になった.又適当な人工呼吸は肺胞を開大させ得ると考えられるので,新生児哺育にこれらの点を考慮にいれれば,死亡率を更に減少させ得るものと考えられる.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1967-05-01