子宮筋の収縮性蛋白に関する研究
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概要
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子宮筋AM(=Myosin B)の研究はCsapoにはじまりその後2,3の論文が発表されているが,そのいずれも粘度変化又はATPaseだけを個別に,しかも骨格筋の研究と同じ条件下で観察したものであつて,その結果のもつ生理的意義については,必ずしも明瞭なものではなかつた.我々はこの点に鑑み,子宮筋がホルモン等の影響に極めて敏感である事を充分考慮に入れ,寧ろその影響の解析を主目標として研究を行つた.その結果妊娠子宮については妊娠経過に伴い,AMの量,ATPase,粘度のATP感受性及び超沈澱のいずれも増加するのを認めた.AMの量は,妊娠経過に伴つてほゞ直線的に増量するが,ATPase活性,粘度のATP感受性及び超沈澱は妊娠初期から中期への増加は緩徐であるが,中期から末期に急に上昇するのを認めている.又AMの量,ATPase,粘度のATP感受性並びに超沈澱はestradiol(estと略)投与により増加しprogesterone(progと略)投与によつて減少する傾向を認めた.またAM抽出過程の最終段階においてAMの単位重量がゲルとして占める体積は妊娠経過に伴い上昇して行く傾向にあり,est投与群ではprog投与群より多い事が示された. なおこの論文において,子宮筋AMの超沈澱が骨格筋と同様Caによつて促進し,Caに特異的なキレート剤GEDTAによつて抑制されることを示し,Caが平滑筋においても収縮弛緩を制御する因子である事を明らかにした.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1967-04-01