未熟児の水出納におよぼす環境温度ならびに湿度の影響
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概要
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未熟児哺育の原則は適当な保温保湿,酸素供給,栄養ならびに感染防止の4点にしぼられる.今回は各種温度,湿度の組合せ環境の下で未熟児を哺育し,不感蒸泄量,尿量を実測するとともに,それに対応して酸素消費量を測定して,哺育環境が未熟児におよぼす影響を検討した.児を恒温恒湿室内におき,直視式自動人体天秤を用いて,体重を逐時測定し不感蒸泄量を算出した.また哺乳量,尿量の測定を厳密にして,それらより水出納比を求め,さらに直腸温の推移をも併せて測定した.同時に高橋氏法にて酸素消費量を測定した. その結果は次の如くである.(1)不感蒸泄量は成熟児の場合と同様,湿度に関しては高湿になる程小となる傾向が明らかである.しかし温度に関しては高温(31〜32℃)或いは低温(21〜22℃)ではやや大となるが,その中間の温度ではこれらより小となる傾向がうかがわれる.(2)尿量は温度,湿度の変化による著差はみとめられないが,概括的にみると高湿(80〜95%),高温(31〜32℃)で減少するかの如き傾向がみられる.(3)直腸温は高温(31〜32℃)或いは低温(21〜22℃)では環境温度に影響されるが25〜29℃ではよく安定した平衡状態を示している.(4)水出納比,水排泄量/摂取量をみると,その値は湿度が高くなると小となり,水貯溜傾向がみられる.(5)酸素消費量は環境温度,湿度の変化により余り著明な差異はみとめられないが,不感蒸泄量の変化と対比してみると,ほぼ平行的な関係がみとめられる. 以上の実験結果は澤崎一派の年来の研究とも総合して,未熟児の哺育環境としては高湿(80%以上)がのぞましく,また温度に関しては成熟児の場合(昭和40年総会発表)よりは高温が適当であるが,従来考えられていたよりは低温の25〜29℃程度の温度が好結果をもたらすことを示唆している.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1967-10-01
著者
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