妊娠中毒症の胎盤機能に関する研究 : 尿中Estriolを指標として
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概要
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妊娠中毒症における胎盤機能不全の存在は, 従来の臨床的経験及び基礎的研究から疑う余地がない. そこで, 妊娠中毒症妊婦の管理に当つては, 胎盤機能を臨床的な方法で把握し, これに基づいて児を救うための対策を立てることが必要となる. 著者は妊娠尿中Estriol (以下ETと略)を指標とする胎盤機能検査法について検討を加え, 子宮内胎児死亡例では尿中ETが極端な低値を示すこと, 妊娠末期に測定した尿中ET値と未熟児出産率及び周産期児死亡率との間に密接な相関関係があること, 生下時児体重ともかなりよく平行することなどを認めた. この成績から, 尿中ETは胎児胎盤系の機能の一指標となり得ると考え, 本法を補助診断法として妊娠中毒症の胎盤機能を臨床的に追求した. その概要は以下の如くである. 1)統計的に妊娠中毒症の児の予後が悪く, 重症ほど著しく高い児死亡率, 未熟児出産率を示すが, 尿中ET値も正常妊娠のそれの平均値以下に分布し重症例では正常限界を超えた異常低値を示すものが多い. 2)臨床統計から, 妊娠中毒症の胎盤機能不全には単位重量当りの機能低下という質的なものと, 胎盤が異常に小さいという量的なものとが混在することを推測し得るが, 尿中ET値はこの両者を反映していると思われる成績を得た. 3)教室の4型分類及び新たに考案した症候別分類の各型における児の予後と尿中ET値とから, 妊娠中毒症の胎盤機能障害は血管・腎系の障害とほゞ平行するものであることが推測された. 4)尿中ET値, 過小胎盤の頻度, 梗塞胎盤の頻度, 児の予後等から綜合的に考察すると, 妊娠第30週以前から高血圧と蛋白尿を併発する症例では胎盤の発育も阻害され, 質的にも量的にも機能不全を来すと思われる. 5)浮腫のみ強度で高血圧や蛋白尿のない症例では未熟児や児死亡が1例もなく, 尿中ET値も正常範囲にあるので, 浮腫は胎盤機能とは無関係であると考えられる. 以上の成績から, 妊娠中毒症妊婦に対して症状の種類, その程度及び発症時期等を重視しつゝ, 尿中ETの測定を繰返して臨床的に胎児胎盤系の機能を推測することが, 妊婦管理上重要な指針を与えるものと考える.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1966-06-01
著者
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