新生仔急性Anoxiaの病態生化学的研究
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概要
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新生仔犬の急性Anoxiaでの臓器Glycogen消長を追求する目的で,心,肝,脳,骨格筋Glycogen含量をAnoxiaの経過に従つて測定し,更に血圧,心拍数の生理学的因子と血糖値,電解質,血液ガス値の血液生化学的因子を同時に測定して相互の関連を追求した. 胎児のAnoxiaに対する耐性は代謝源である心筋Glycogen量により規制され,心筋Glycogenの変動状態と肝Glycogen量との関連を見出したので肝Glycogen量5mg/g以上の高肝Glycogen群と5mg/g未満の低肝Glycogen群の2群に分けて検討した. 心筋Glycogenは低肝Glycogen群は対照時すでに低値で15分迄殆ど変動がないのに対し高肝Glycogen群はAnoxia後10分迄ほぼ直線的に減少し15分値で低肝Glycogen群に一致した. また15分迄は一定の生理的変動を保ちそれ以後は急速に悪化した. 以上より心筋Glycogenは2種類に分類することが出来,生理的因子の規制に預るGlycogen量はGlycogen reserveと考えられ,それ以下のGlycogenは細胞構成要素としての機能を保ちfixed Glycogenと考えられる. 更にAnoxiaの病態を糖代謝,生理学的因子,酸塩基平衡,電解質代謝の各面より検討したが,いずれも相互に影響してHomeostasisの保持に努め,Anoxia早期には循環動態の維持が主体となるのでこの時期のGlycogenの変動は心筋Glycogenに著明で嫌気性解糖系が優位となる中期以降は肝Glycogenの分解が促進され過血糖を生じるが,息性Anoxiaでは代謝環境の悪化が急激なためにその利用は極度に制限されて過血糖のみが持続すると考えられ,末期は細胞崩壊のためにfixed Glycogenまでも消失し不可逆性の変化に陥いるものと考える.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1969-06-01