不妊婦人血中精子不動化抗体の多様性に関する研究
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概要
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精子不動化(SI)抗体と、精子凝集(SA)抗体、及び間接蛍光抗体法によって検出される抗精子抗体(IF抗体)との相関性を検討するため、126名の不妊婦人について、以上3種の方法によって抗体の検出を行った。SI抗体陽性者8名のうち6名(75.0%)はSA抗体陽性、5名(62.5%)はIF抗体陽性であった。また、SI抗体陰性者118なの内、7名(5.9%)はSA抗体陽性、52名(44.1%)はIF抗体陽性であり、これらの結果は3種の方法によって検出される抗精子抗体が、それぞれ異なった精子抗原を認識している可能性を示すものである。ついでSI抗体の多様性について抗体吸収法によって検討した。精漿抗原によるSI抗体の吸収効果には、各精漿抗原とSI抗体の組合わせにより著しい差異が認められた。即ち一定の抗体を異なった男性の精漿で吸収した場合にも、また個々の患者の抗体を同一男性の精漿で吸収した場合にも、抗体の吸収効果に著しい差がみられた。これらの結果は各男性における精漿抗原の多様性と共に各不妊患者でのSI抗体の多様性を示すものである。更に精子表面の糖鎖抗原よりみたSI抗体の多様性を検討するため、過ヨウ素酸処理及びMixed glycosidase処理により精子表面の糖鎖抗原を破壊した精子を用いて、不妊患者のSI抗体の吸収実験を行った。未処理精子では全ての症例でSI抗体が完全に吸収されたが、過ヨウ素酸又はMixed glycosidase処理精子ではSI抗体が完全に吸収されるものから、全く吸収されなくなるものまで症例によって異なった吸収パターンを示し、SI抗体の中には糖鎖抗原を認識するものと、そうでないものの存在する事が明らかとなった。以上の結果はSA抗体やIF抗体と同様にSI抗体にも抗体の多様性が存在する事を示すものである。
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1987-07-01
著者
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