ヒト胎盤絨毛組織の成長と機能における C-kinase の役割について
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概要
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C-kinaseは、Ca^2+,phospholipidで活性化される細胞内蛋白リン酸化酵素で、情報伝達機構や細胞増殖機構に深く関与していると言われている。著者は胎盤組織の発育や成長にもC-kinaseがかかわるあっている可能性を考え、ヒト胎盤絨毛組織を用い、まず細胞質分画からC-kinaseの抽出を行うとともにその酵素学的性質などを検討した。つぎに膜分画を用いて各種ホルモンなどの添加を行い、膜吸着性C-kinaseの生理学的作用についても検討・考察した。以上の実験よりヒト胎盤絨毛性C-kinaseについて次のような結果を得た。 1) C-kinaseの抽出は、Ca^2+によって酵素を膜に吸着させて膜分画として回収したのち、EDTAを用いて可溶性分画である細胞質分画に酵素を遊離させた後、イオン交換クロマトグラフィーを行うことにより比較的高率よく行えた。 2) このC-kinaseはHPLCを用いてさらに精製すると、Ca^2+,phospholipidに対する反応および基質特異性から、他の臓器および動物から抽出された既知のC-kinaseと同様のものであった。 3)精製C-kinaseの至適pHは8.0、Ca^2+に対するKaは1×10^-5M、phosphatidylserineに対するKaは80μg/mlであった。 4)細胞骨格蛋白であるfilaminがC-kinaseによって特異的にリン酸化された。 5) C-kinase活性は妊娠各trimesterによって異なり、末期は初期の約5倍であった。 6)C-kinase活性はhCGによって抑制され、DHAおよびDHASによって著明に促進された。以上の結果より、胎盤のC-kinaseは組織の発育と維持、さらに胎盤の特異的な機能発現機構などにも深くかかわっている可能性が示唆された。
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1987-07-01
著者
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