子宮頚癌進行過程の病理組織学的研究
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
子宮頚癌がIa期に始まりII期,III期へと進行する経路に全く疑間の余地なしとするのが通常である.これとは全く逆の方向から,即ちII期よりIa期を眺めることより,Ia期からII期,III期へどの様な進行過程を迫るのかを知ることを検索の出発点とした.そのため子宮頚癌I期及びII期手術症例より術前に肉眼的発育型が明記されていた118例を選出し,各型別にそれらを組織学的に通覧し新たに組織学的発育型の分類基準を先づ設定した.この分類基準を頚管全域侵襲を示した62例に適用し,各症例の癌発育様式の判定が可能かを試みて,組織学的発育型分類の妥当性と適用性を検した.肉眼的表在発育型2例と外向型33例は何れもそれぞれの組織学的分類基準に一致したが,肉眼的内向性発育型81例では組織学的内向型69例とcleft発生の癌12例とに分かれ,癌穿通を呈した2例は組織学的に内向性発育型と一致しその亜型と解された.組織学的発育型分類(表在発育型,外向性発育型,内向性発育型及びcleft癌型の4型)の診断基準より頚管全域癌占居を示す62例を分類すると,外向性発育型よりの進行例21例,内向型からの25例及びcleft癌型の進展16例に分けられ,各型基準に全例が該当した.従って全検索対象の180例は組織学的発育型分類の表在型2例,外向型54例,内向型96例及びcleft癌型28例で構成されていた.肉眼的内向性発育型の特長とされる乏血性癌性壊死による潰瘍は81例全例に見られず,組織学的内向型28/96例に認めた癌性壊死は,癌細胞(錯)角化による自発的壊死で癌細胞自体の性状に由来し,従来のcrater carcinomaが癌進行末期の必発的随伴性変化とは解されなかった.又肉眼分類でのnoduloinfiltrative,又はflatinfiltrative typeにcleft癌型が含まれると推定され,表層上皮由来の腫瘍のみを対象とする肉眼的発育型分類の矛盾が指摘された.子宮頚癌の進展方向は発育型と無関係に組織低抗性に左右され"モグラ"方式に頚管域浅在部を扇状に伸展し,子宮筋層縁で弧状を画いて上向する弯向性進展を示した.表層上皮由来の癌増殖は常にpapillomatous patternを原型とし,これに発育方向が加味されて癌巣は構成されるので,Ia期の組織像からII期の示す癌巣への連続的進行過程は想定し難く,Ia期の再検討が必要に思われた.
- 1982-06-01