螢光偏光法による胎児肺成熟度の判定 : L/S ratio,shake testおよび吸光度測定との比較検討
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概要
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周産期医学において,新生児の呼吸窮迫症候群(RDS)は依然として重要な問題であり,胎児肺成熟度の判定は,臨床的に不可欠な検査法である.著者は,螢光偏光法により,肺成熟度を示す値である螢光偏光度(FP値)を測定し,在胎週数やRDSとの関係を検討した.さらに,FP値とlecithin/sphingomyelin(L/S) ratio,shake testおよび650nmでの吸光度測定で得た肺成熟度判定の結果との比較検討を行い,次の成績を得た.(1)80検体の正常妊娠例の羊水において,FP値を測定したが,FP値は,妊娠9ヵ月の初めまでは高い値にとどまるが,サーファクタント合成が著明に促進する時期と一致して,妊娠34週頃より急激に低下し始めることが認められた.また,14検体の異常妊娠例羊水のFP値測定を行つたが,6例の無脳児および1例の先天性甲状腺機能低下症の症例においては,有意に高いFP値が観察され,肺成熟の遅延を認めた.(2)羊水採取後23時間以内に分娩を終った72例のうち3例がRDSを発症したが,それらのFP値はすべて1,OOO(本報告では実際の値を3,000倍にして表わしており,実際の値はO.333)以上であり,RDSを起こさたかった残りの69例では,1例を除いて1,OOO以下のFP値を示した.したがって,FP値の肺成熟の境界値としては,1,OOOが妥当であると思われた.また,FP値のfalse negativeおよびfalse positiveの率は,それぞれ1.4%,O%であった.(3)L/S ratio,shaketestおよび吸光度測定との比較では,FP値が最も信頼性が高いことが示唆された.以上のことより,螢光偏光法による胎児肺成熟度の判定は,簡便で迅速な方法であり,また,信頼性が高いことが示された.今後,臨床的に広く応用されるべきものと思われる.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1982-06-01
著者
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